感想文としては満点

演劇と言葉あそび

演劇

【Web再録】茶番

こちらの文章は某企画に寄稿したものです。楽しい企画をありがとうございました! なるほど結婚式とは茶番である。 そう得心したのは大学生だった頃に参列した従姉妹の結婚式の最中だった。もう五年ほど前のことで、私は成人式用に買ってもらった立派な搾り…

誰の「初級」か? 〜舞台『ダブル』の持つ構造とその問題点と演劇への愛について

地道にオタクとして経験値を積んでいくと不意にまるで福音かのように報われる瞬間があるというのが持論なのだが、舞台『ダブル』はまさにこれにあたる現場だった。 紀伊國屋ホールでつかこうへい作品を観続けてきたこと、『ダブル』を読み続けてきたこと、ブ…

シアターテイメントの覆面座談会について真面目に考えてみた〜「ネタバレ」考

年明けに公開されたシアターテイメントNEWSが公開した演劇プロデューサーと演出家による覆面座談会の記事を読んだ(そもそも登場するAとAが大まかにでもどのような立場か明示していないのでどちらもプロデューサー兼演出家かもしれないし、その辺りのことは…

2022年総決算演劇界隈アンケート結果

遅ればせながらあけましておめでとうございます。前職より忙しくない職に就けたはずなので今年は更新頻度を上げていきたい所存です。本年も弊ブログをよろしくお願いいたします。 さて、年末から年始にかけて募集したアンケート(【告知】アンケートを取って…

時折振り返られるからこそ青春なのである〜『初級革命講座 飛龍伝』

『飛龍伝2020』と『初級革命講座 飛龍伝』のラストシーンを含む内容に多く触れる記事です。 今年7月8日から7月25日に企画されたつかこうへい十三回忌特別公演「つかこうへいLonely 13 Blues」にて紀伊國屋ホールで上演された『初級革命講座 飛龍伝』。 『ダ…

舞台『青の炎』を観に行ったら「あやや」が目の前に現れた

「あやや」がいた こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにあややがいた!!!!オタクの誇張表現とか過言とかじゃなく、本当に「あの」あややが2022年に目の前に現れた。観劇後に待ち合わせた嵐オタクの人と「この公演を一言で表すなら、あややがいた!…

人間の根源的な美しさこそが宇宙の謎 『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』

『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』お疲れ様でした。全11公演を総て観劇したからといって妙な感慨深さがないのが不思議だった。舞台上の人達も私もやり切ったのだと思う。ただ謎でも何でもなく可愛いと思える、味方良介と石田明が心を通わせ生まれた愛おし…

ミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stage

『新テニスの王子様』ミュージカル化第2弾。 中学生と徳川カズヤがU-17代表上位10名であるGenius10の代表の座を賭けたシャッフルマッチに挑むストーリー。リョーマからの越前南次郎への伝聞のような形で試合毎に章立てされ、幕が上がる演出がなされている点…

ノンスタ石田マジで芝居が上手い

みんな知ってる?ノンスタ石田はマジで芝居が上手い。 いや私だって知ってますよ。NONSTYLEはM-1グランプリ他各種賞レースのタイトルホルダーで、結成から25年経っても未だ「女子高生が選ぶ好きなお笑い芸人」にランクインするほどの人気で、世間では人気も…

記録:2021年3月

1月にnoteに投稿した記事(綾野剛の演技に感じた「本当」への渇望〜なぜわれわれは『MIU404』に熱狂したのか)がTV Bros. note版 「マイベストカルチャー to 2021」の<銀賞 ドラマ部門賞>を受賞しました。 note.com かなりの年月なんらかの文章を書き続け…

記録:2021年2月

梅棒 11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』 0227昼 初梅棒。台詞という雄弁なはずの言語情報が削ぎ落とされた演劇であるはずなのに、むしろ情報量が多い感覚。取り溢すとついていけなくなる気がして、必死で観劇した。 この作品の副読本として『あの頃。』…

記録:2021年1月

今年は観劇数も少なそうなので久しぶりに観劇した作品を全部独立した記事として上げたいなと思ってまとめを作ってなかったんですが、割と忙しくなりそうで難しい気がしてきたので急遽まとめます。極力は書いていきます。 去年以降映像作品もよく視聴するよう…

『初級革命講座飛龍伝』から読み解く漫画『ダブル』

漫画『ダブル』存在を知ったのはドラマ化企画が発表されたタイミングだった(野田彩子「ダブル」ドラマ化企画が進行中、世界一の役者を目指す男2人を描く演劇もの - コミックナタリー)。「キャスティング予想でもしてこの盛り上がりに乗じようかな」と軽い…

『熱海殺人事件 ラストレジェンド ~旋律のダブルスタンバイ~』感想

『熱海殺人事件』が、少し早い春を連れて今年もやって来た。 2021年の「熱海」は『熱海殺人事件 ラストレジェンド ~旋律のダブルスタンバイ~』として、2月から始まる耐震補強のために改装工事に入る紀伊國屋ホールの改装前最終公演として上演された。 今回…

えんげきチャート集計結果

先日はアンケート(【お誘い】演劇の話をしませんか - 感想文としては満点)にご協力いただきありがとうございました。勢いで企画したものの全然参加していただけなかったらどうしようと思っていたのですが、思ったより多くの方に反応を頂けて嬉しかったです…

ミューズのワンピースに見る彼女の高潔さ

2020年10月18日 「ガラスの部屋のミューズ」 「あ、うまい。」と、テルホが言い訳じみた弁解をしはじめたときに思った。 幼さの残る輪郭、大きめの瞳、形がよく控えめな唇に、薄い体躯。まるで男性アイドルのような永田聖一朗の芝居はなぜだかどうにも小劇場…

ひとりしばい Vol.4「いまさらキスシーン」

玉置玲央はすごい。この作品を語る上でこのバケモノの存在をないものとすることは不可能で、これをネガティブに捉えているのではなく新しい「ひよりちゃん」をどう捉えるかというのが重要なのだと感じた。 冒頭、代名詞と言える台詞から一転ポップなラップ。…

THE MIX UP Vol.2「売春捜査官〜ギャランドゥ」

“いま、義理と人情は女がやっております!”で締められる「売春捜査官」は基となった「熱海殺人事件」にも登場する木村伝兵衛、その部下、二人の元に転任してきた熊田、そして犯人大山金太郎の基本の四名に加えて愛国心を持つ事を許されなかった朝鮮人の五人…

太陽の子に抱かれて

好きな人の匂いを買った。 etat libre d'orangeというブランドのFILS DE DIEUという香水だ。意味は「太陽の子」。販売していた NOSE SHOPのInstagramの投稿には下記のような説明書きが添えられていた。 彼は太陽を連れてくる。美と葛藤、狂喜と苦痛を判別す…

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.1 「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」

週に1度は紀伊國屋ホールに通い「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」を観劇した3週間は、大阪でチャレンジ公演を観たその日に夜行バスに乗り込み関東方面へ越してきて生活に慣れるまでの3週間でもあった。その間に「東京に慣れる」あるいは「東京に染まる」と…

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」

2019年4月27日昼公演 春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」@紀伊國屋ホール 1994年に発表されたつかこうへいの長編小説「銀幕の果てに」を戯曲化。物語は秩父山中にある大東映画撮影所を舞台に「野火止玲子」を中心に据え、時間、場所、次元、真偽さ…

【本日の現場】熱海殺人事件 LAST GENERATION 46 チャレンジ公演

春だー!熱海だー!味方だーーー!!! pic.twitter.com/BfMciIN039— かちん (@loveholiday128) 2019年3月30日 やってきました熱海の季節!遅いよバカ!待ちくたびれたよ! やはり日本の春にはね、熱海ですよ。これをやってから桜のつぼみが綻び始めるという…

【超理論】一球勝負の是非〜“天衣無縫の極み”という13月を探して〜

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学VS四天宝寺感想〜オタクの妄言編〜 そんな9代目の中心にいた仁愛には新緑のような、青い未来のにおいを濃く感じる。実力も伴わないうちから帝国劇場のセンターに据えられてしまいそうなスター性だけれどもそ…

うつくしさのなかにある哀しさの気づき

2018年8月25日夜公演 舞台「野球」飛行機雲のホームラン@シアタードラマシティ 現在、過去、未来。時間も場所も回想として「とある試合」の合間に折り込まれ、始めのうちは時系列が読めないまま、物語は進んでいく。それを眺めていると、この試合の持つ切実…

エンターテイメントに絶望を感じたくないな

「八王子ゾンビーズ」を観劇した。なんて不愉快な舞台なのだろうと思った。この平成も最後になろうという年に生まれていい新作演劇ではなかった。 ストーリーのつまらなさも、客席で響くタンバリンの音も、スタッフが客席でタンバリンを売り歩いている様も、…

MANKAI STAGE『A3!』~SPRING & SUMMER 2018~所感

碓氷真澄としてステージ上に現れた時、ジュリアスとして声を発した瞬間、私の目に狂いはなかったなと思った。彼という役者を好きになった時のような、魂が震えるような瞬間をこれからも感じたい。感じさせてくれた!やっぱり天才の役者!テニミュを卒業して…

【本日の現場】Coloring Musical「Indigo Tomato」

私にとって青は特別な色だ。未来とか、希望だとかは青い色をしていると思う。好きな色で、好きな人の色。五関くんの色、青学の色、そしてマーキューシオ様の色!そんな色をまた平間くんが纏って、ワクワクした顔をしていて、それを見られてとっても幸せな気…

「テニミュ」とわたし 〜9代目青春学園中等部男子テニス部卒業によせて

キャスト、スタッフ、そしてファンに至るまでDream Live2018に関わった全ての皆様、千秋楽おめでとうございます!そして、9代目青春学園中等部男子テニス部の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本当にお疲れ様でした! キャストもスタッフもファンもみん…

【本日の現場】ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング

2018年5月16日 @HEP HALL 記憶と記録に関する物語。記憶は不確かで、眠れない夜のように、あるいは起きられない朝のようにただそこらを揺蕩う。例えば今が朝の4時だとして、あるひとつの視点から見れば“今”は「眠れない夜」の一瞬であり、また別の視点から見…

【本日の現場】Take Me Out 2018

2018年4月12日夜公演 @DDD AOYAMA CROSS THEATER 目の前で10人程度の男がズボンや靴下やシャツを脱いだり、着たりを繰り返す。その合間に織り込まれる個々の信心、それに伴って思い描かれた偶像、あるいは差別(差別というものはつまりは人としてこうあるべ…