感想文としては満点

えんげきとことばあそび

当ブログについて

熱海殺人事件』を擦り続けながらなんらかのエンタテイメント作品に言及しています。テーマは、愛です。

観劇した作品について独立した記事を書いた場合には本日の現場 カテゴリーの記事一覧 - 感想文としては満点に、その他の作品も全て月毎に 観劇まとめ カテゴリーの記事一覧 - 感想文としては満点 で纏めております(2019年〜)。

 

綾野剛の演技と『MIU404』について書いた『綾野剛の演技に感じた「本当」への渇望〜なぜわれわれは『MIU404』に熱狂したのか』で、TV Bros.主催投稿コンテスト「マイベストカルチャー to 2021」<銀賞>ドラマ部門賞をいただきました。

受賞作:綾野剛の演技に感じた「本当」への渇望〜なぜわれわれは『MIU404』に熱狂したのか|かちん|note

 

ご連絡はTwitterのDM(またはnoteのお問い合わせ | note(ノート))をご利用ください。

twitter.com

プレゼントボックスはこちらです。

https://giftee.co/u/boogiewoogie

 

 

「演劇ドラフトグランプリ」講評

 演劇ドラフトグランプリ開催、そして劇団ズッ友グランプリ受賞おめでとうございました。個人的な嗜好としては比較的小さい箱での舞台作品を好むタイプなので、新しい催しであることも含めて、どのように楽しめばいいのか?はたまたそもそも楽しめるのか?些か不安ではありましたが、ランタイムを揃えて続け様にそれぞれのチームの作品を観ることで新たな発見もあり面白い試みだったと感じました。

 作品に優劣を決めて観客も投票をする企画ということで、折角なので講評を書きました。

ID Checkers

演出・脚本:中屋敷法仁

テーマ:奇跡

タイトル:キセキの男たち

 全球団からの一位指名間違いなしのバッターキヤマのライバルであるフウマ少年。ライバルとは言うものの彼にはちっとも勝利のイメージは湧かない。練習試合でも手を抜いてしまう。そんなフウマ少年の元に謎な青年が現れ、その言葉に惑わされることで、とうとうイップスに陥ってしまう。青年は何者なのか?フウマ少年は高校最後の夏をどう生きるのか?

 トップバッターということで「どんな作品が見られるんだろう?」と思いながら役者の登場を見守り、役者が台詞を話し始めた途端に中屋敷節全開で痺れた。執拗に韻を踏む、劇団柿喰う客のような台詞回しでありながらも、中屋敷法仁が生み出した言葉のペースに飲み込まれない役者もいるところに演劇ドラフトグランプリならではの化学反応があり面白い。

 選手・監督とは違った立ち位置にいた青年役の荒牧慶彦が演出に染まらない演技で作品世界に現れることで「演劇ドラフトグランプリ」ならではの仕上がりになっていたし、中屋敷演出色の強い冒頭とラストに対して良い中和剤になっていた。ネルケプランニングが絡んだ企画に相応しい爽やかな青春群像劇を選んだところに「やりたいこと」と「優勝を狙える構成」のバランスが考え抜かれたプレゼン力の高い作品だった。

 実際にボールを用いて最後の夏に全力で野球に打ち込む青春群像劇といえば、西田大輔作・演出の舞台「野球」飛行機雲のホームラン〜Homeran of Contrailを思い出すが、なにか意識しているところはあるのだろうか。

劇団『打』

演出・脚本:西田大輔

テーマ:りんご

タイトル:林檎

 男は言う。「皆さんを誘拐する」。そして「声が聞こえるだろう」と。やがて分断された「4つの国」が林檎を持ちて、それぞれの方法で世界をひとつにまとめようとする。

 大胆な仕掛けがあったことも含めて、一度観ただけでは咀嚼しきれないためなかなかコメントが難しいが、演劇ドラフトグランプリで上演された作品としてジャッジを加えるとするとひとつ言えることは20分でやるには難しすぎるテーマ選択だった。

 感動したのは、普段演劇を行うような劇場よりも大きな会場であっても瞬時に完全に場を掌握した佐藤流司の見得切り力と芝居力だ。佐藤が仮面を取った瞬間に一気に空気が変わったのを感じた。照明の当て方も含めて、あの瞬間はすべてが素晴らしかった。

超MIX

演出:植木豪

脚本:畑雅文

テーマ:虹

タイトル:リューダ Luda

 かつて人間の感情は龍神によって司られていた。穏やかに暮らしていた人間はやがて蛇神、鰐神に翻弄され争いを好むようになる。争いや貧困など苦しみ喘ぐ人間はどうなってしまうのか?

 爽やかな青春群像劇から一転ダークな世界を表現した劇団『打』に続くように、超MIXもダークファンタジー調で世界情勢や戦争や貧困を描いた作品が上演されたことに驚いた。「お祭り」的な側面の強い企画のため、メッセージ性の高い作品は少ないかと思っていた。しかし植木豪演出の醍醐味はライティングにあるから(予算の関係かお得意のレーザーがなかったのは残念ではあるが)暗めの物語が演出に合っていた。

 当然踊るだろうという役者陣を活かして存分にダンスシーンがあったのが嬉しかった。

劇団『ズッ友』

演出・脚本:松崎史也

テーマ:地図

タイトル:天を推して歩く

 伊能忠敬が天文を学び、日本を歩き、恩師の死に悲しみ、日本地図を完成させるまでの史実を基にした物語。

 「かわいらしいおじさん」である唐橋充の魅力がコメディタッチの伊能忠敬の物語によって増幅された良い作品だった。ツイートによると、唐橋充主演で伊能忠敬の物語をやるのは座長の染谷俊之発案だそうで、チームの年長者枠の活かし方によっても他チームとの差別化を実現していたし才覚があるなと感心した。

 歴史ものだから入り込みやすいし、コメディタッチなので20分の枠に収めるための端折りがスムーズだし、すべての要素が「お祭り」的な企画に1番マッチした作品が提示されたと感じた。

 作品としての出来もさることながら、観客投票型のチーム制バトルのため「良いチーム」であることも勝負においては重要だと思うが、その点でも役者がいきいきとしている様が見て取れて素晴らしかった。

 

総評

 投票タイムに入った時、素直にその日1番楽しめたチームに入れようと考え、私は劇団『ズッ友』に投票した。

 他のチームの得票がどのようになっていたのかは開示されていないが、誰が主人公で物語の軸なのかが瞬時に解る作品が総合的な評価を得た結果なのではないだろうか。ジャンプ編集長の講評にもあったように、観客が作品に入り込むには「何に注目すべきか」を提示したほうがわかりやすい。作品がすべてわかりやすい必要はないとも思うが、短時間で多くの観客を楽しませようとするとどうしてもある程度のわかりやすさが必要になってくるだろう。その点で劇団『ズッ友』は評価されたのだと思う。

 演劇の性質として、観客のほとんどが作品に対して関心を持っていることが挙げられる。情報解禁、タイトル、大まかなあらすじや世界観を提示するポスタービジュアルなどの事前の情報を仕入れて観客は客席に座る。映画などの他の芸術鑑賞体験と比べてもチケット料金が高いからなおさら観客は好みのものを観られるように作品を選ぶだろう。しかし、演劇ドラフトグランプリでは脚本・演出・座組とテーマのみしか観客には情報が事前に与えられない。演劇が本来持つアドバンテージを捨てた状態で上演を行わなければならなかったから各チームかなり厳しかったのではないか。

 ビジュアルやあらすじをチェックして公演を楽しみに劇場へ行くところまでが本来の観劇体験なのかもしれないし、作品としても当たり前だけどちゃんと時間取って創り上げた作品の方が良い作品になるに決まってるが、主に2.5次元界隈を盛り上げる様々な個性のある演出家を集めて作品作りをするとこういう差が出るのだなというのが如実にわかった点では面白い催しだったのではないかなと思う。

 

【宣伝】2022年に観劇して良かった2.5次元作品

迷宮歌劇『美少年探偵団』

Amazon | 【Amazon.co.jp限定】迷宮歌劇「美少年探偵団」(早期予約メーカー特典:「キャストコメント視聴シリアルコード」付 ※2022年5月31日まで対象)(オリジナル特典:「舞台写真セット(札槻 嘘、麗 中心)」付)(完全生産限定版) [Blu-ray] | アニメ

 マジで最高。絶対絶対続編作って欲しいので円盤買ってください。

 演出の三浦香は大きいセット展開が得意なイメージなので、あえてあまりセットに予算がかけられない演劇ドラフトグランプリに参加してみて欲しい。どのような作品に仕上がるのか気になる。

記録:2022年2月

ミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stage

@KAAT 神奈川芸術劇場

0205昼/0205夜

@Tokyo Dome City Hall

0211昼東京初日/0211夜/0212昼/0212夜/0218夜(平松來馬250公演記念)/0220昼/0220夜(千穐楽

 「テニミュっていいな」。久しぶりにそう思えた公演。The First Stageを観なかったことを後悔。

 これはテニミュを観る人全員そうだと思うけど、天衣無縫の照明が大好き。天衣無縫が大好き。

 加えて私は3rdシーズンのテニミュが大好きだから、天衣無縫になった遠山金太郎越前リョーマのことを語った時、見える景色に確かに彼らがいて、その連続性が嬉しかった。そして、きっと平松來馬が王子様を卒業した後、私には彼の金ちゃんを思い出す瞬間がきっと多くあろうと思う。

舞台『機動戦士ガンダム00』破壊による覚醒 Re:(in)novation

@新国立劇場 中劇場

0213昼

 ロボット戦闘アニメでありながら人類の対話の物語。佐々木喜英が座組に加わったこともあり、戦闘シーンも見応えがあった。

 永田聖一朗は繊細な芝居が上手い役者との印象があった。しかし本作での永田聖一朗の演技は、繊細ながらも壮大な物語に決して飲み込まれない、まるで立ち上る感情が目に見えるような圧倒的なものだった。基本的にはクールであまり感情が表情に出ないティエリアだが、表情筋以外のすべてで最短ブチ抜きで怒りを発露させられる技術によって、ティエリアが持っているもの総てが身体に乗っているように感じられた。

シラノ・ド・ベルジュラック

@東京藝術劇場 Playhouse

0219夜

 情報解禁時から何故ゴーチ・ブラザーズが手掛けているのか全くわからなかったが、観劇しても特に理由はわからなかった。

 浜中文一には意識してないのにたまに劇場で出会うので面白い。それほど良い作品に出演されているということだと思う。

 絶世の美男子と言っていい古川雄大が醜い男シラノを演じることで美も醜も単に異形であるとしている物語と受け取ったのだけれど、何よりも私はキスが暴力であることをきちんとやったところで良い作品だなと思った。シラノにキスしたクリスチャンのシーン!ロクサーヌとは違って「本当に」キスしていたことへの拘りを感じた。喧嘩はちゃんとやるべきだから。

 クリスチャンは「キスをすることでシラノと1人の男になれたらどんなにいいか」と考えたんだろうし、ロクサーヌとキスした時/キスをする妄想をした時に「1つになれた」と思ったことがあるのかもしれない。そうだとしたらそのキスはクリスチャンなりの詩だよ!おめでとう!

機界戦隊ゼンカイジャー

 増子敦貴演じる追加戦士ツーカイザーことゾックス・ゴールドツイカーが出演してから視聴して最終カイまで辿り着いたのでほぼ完走と言っていいんじゃないか!?初めて戦隊シリーズを完走出来た。

 とにかくアッパーなテンションで駆け抜けてくれたおかげでもあるし、その裏にあるメッセージも好きだった。

 人間とキカイノイド。それぞれ違う種族が手と手を取り共闘するところからスタートするゼンカイジャー。最初は異種族との共生から始まったが、たとえ人間同士であっても仲違いは起こる。それでも、為すべきことが違ってもお互いを思いやることが出来るし、手に手を取り合える瞬間がある。そういう介人とゾックスとステイシーの在り方が好きだった。

劇場版『呪術廻戦0』4DX

  4DXを観るときはツルツルのボトムスは履いてはならないことを学んだ。椅子の上でずるんずるん滑る。

ミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stage 観劇レビュー

 『新テニスの王子様』ミュージカル化第2弾。

 中学生と徳川カズヤがU-17代表上位10名であるGenius10の代表の座を賭けたシャッフルマッチに挑むストーリー。リョーマからの越前南次郎への伝聞のような形で試合毎に章立てされ、幕が上がる演出がなされている点が特徴的だった。無印テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)とは違い、物語に「全国大会優勝」という大きな筋があるわけではなく、王子様としても各選手それぞれに目標や目的があってテニスをしているように見受けられるため、一つの演目として見ると(「テニミュ」にしては)熱量が分散されがちになってしまうわけで、この演出はテニミュにとって欠かせない試合に賭ける熱量をバラけさせない巧い方法だと感じた。

 The Second Stageを鑑賞するにあたって欠かせない視座があると思っていて、それは井澤勇貴演じる越前リョーガの在り方と種ヶ島修二を演じた秋沢健太朗の巧みさの対比だ。

 井澤勇貴本人が持つ特性にリョーガのストーリーを乗せたかのような役者とキャラクターの境目を曖昧にさせたような芝居や演出と、見事なキャラクター解釈と緻密に作り込まれた動き。対極にありながらも両者ともが素晴らしい身体性によってこれを叶えている。本作の主題であるレギュラー入れ替え戦の(少なくともGenius10としてのプライドを賭けた闘いの)外側にいるかのような態度である2人が全く違うメソッドで作品を支え、強度を上げていた。

 「本作の主題はレギュラー入れ替え戦」と前述したが、それはあくまでも『新テニスの王子様』を原作としたミュージカルとしての話で、舞台作品としてのミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stageには別にテーマがあると考える。それは「越前家の家族愛」だ。

 特に印象的なシーンは、リョーガとリョーマが「光る打球」の特訓を重ねるシーン。このシーンでは、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンでの全国大会決勝前の南次郎とリョーマの滝での修行のシーンを想起させるセットが組まれている。そこでのアドリブのようにも感じる瑞々しい掛け合いにある井澤演じるリョーガの軽薄さが、「あの時に観た南次郎の血を引く者だ!」としか言えない質感で、「越前家の物語」をより際立てていた。

 ミュージカルに初登場し、井澤勇貴の力を持ってして圧倒的な立体感を得た越前リョーガリョーマとふれあう時、それを見つめる南次郎の心が動いた時、ミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stageは単にテニス漫画の舞台化としてだけではなく、家族愛の物語としても輝き、より一層の魅力を持つ舞台作品となっていた。

ノンスタ石田マジで芝居が上手い

 みんな知ってる?ノンスタ石田はマジで芝居が上手い。

 いや私だって知ってますよ。NONSTYLEM-1グランプリ他各種賞レースのタイトルホルダーで、結成から25年経っても未だ「女子高生が選ぶ好きなお笑い芸人」にランクインするほどの人気で、世間では人気も実力も兼ね備えたお笑いコンビの芸人だと認識されているってこと。石田明は「ノンスタ井上じゃない方」「めっちゃ白い方」だっていう認識だってこと。漫才のネタも書いてるし、MCも出来て、最近だと子煩悩ブログも人気だね。YouTubeもやってる。多才か。

 違うんだよ。いや違うくはなくて、前述したどれもが事実だし私もそのようにも認識しているけれど、私はただただ役者としての石田明が好き。超好き。だってとんでもなく芝居が上手いから……。

 ノンスタ石田は芝居がめちゃくちゃ上手いってこと、世の中に知って欲しい。だから石田明の出演作について語ろうと思う。

 私が初めて演技をしている石田明を観たのは2018年2月に上演された『熱海殺人事件 CROSS OVER45』。富山で貧乏から抜け出そうと必死に出世をして上京してきた刑事で、新たな配属先の上司である木村伝兵衛部長刑事の滅茶苦茶な言動に翻弄される役どころの熊田留吉を演じていた。

 この時は正直、「上手いけどエンジンがかかるのが若干遅いな」くらいの認識だった。今思えば、ほとんど素人のような若者を含めた若手俳優たちに混ざって日替わりを盛り上げ、熱量のある演技を引き出し、バランサーとして大いに活躍していたように思う。ワガママな客です、私は。

 その後、1年後の2019年3月にも『熱海殺人事件 LAST GENERATION46』が上演され、前年と同じ熊田留吉を演じた石田明を観た。

 そして驚いた。もうね、めちゃくちゃ上手い。

 熊田留吉は木村伝兵衛の破天荒な言動に振り回されながらも「熱海殺人事件事件」を通して人として大事なものを見つめ直し、出世を目的に警視総監の娘と結婚するために捨てた田舎のユキエという女のもとへ帰り一から出直すことを決めるのだが、この決意を表面する熊田の語りは「泣ける」なんてものじゃないくらいに良いのだ。

 「夜汽車の窓に顔を映し、まだ見ぬ東京での生活を夢見て、自分は胸を高鳴らせておりました。」とつぶやく。すると、富山から上京する熊田の顔を映す窓の情景が浮かび上がり、小狡いが、努力をすることも知っていて、なにより苦労もしてきた男の小ささが愛おしく思える。観客は一気に引き込まれる。静かにひとりごちるように発せられる台詞が、ハンパない求心力を持っているのだ。


www.youtube.com

 次に私が観劇したのが『銀幕の果てに』。本作も石田明の魅力が存分に感じられる作品だった。観劇後の興奮冷めやらぬツイートを見て欲しい。公演が終わる頃にはすっかり石田明のファンとしか言えない状態になっていた。

 見よ、この褒めようを。

 石田明の凄まじい点は、実は『熱海殺人事件 LAST GENERATION46

』の千穐楽から4日後にすぐこの『銀幕の果てに』に出演していることだ。

 舞台作品は当然ながら公演前に稽古期間を要する。つまり3月の『熱海殺人事件』の公演に向けて事前に稽古を行い、3日間の大阪公演、2週間の東京公演に出演しながら並行して次回公演の稽古も行い、別演目の『銀幕の果てに』6日間の公演と大阪公演2日間に出演した。もちろん人気お笑い芸人なので合間にテレビ出演もこなす。約1ヶ月の間、フル稼働なのだ(正確には代役を立てたスペシャル公演が1公演あった)。

 (注:ツイートにもあるように『銀幕の果てに』には石田明の他に『熱海殺人事件』の出演者が4人もいる。それくらい容易いことをやっているわけではない。単に、バケモノの座組なだけである。)

 「熱海殺人事件」と『銀幕の果てに』の評価をお読みいただくと分かるかと思うが、石田明の役者として特に素晴らしいところは、特に人間くさい芝居が上手いところだ。熊田留吉に限らず演じた多くの役は「器が小さくてクズだけど良心との葛藤があり、人間くさくて、どこか憎めない人」であることが多い。そのような役をあの細い身体から絞り出されるように本心が吐露されると、もうたまらなく愛おしく思えるのだ。

 出演した『熱海殺人事件』と『銀幕の果てに』はどちらもつかこうへい作品で、声を張り上げて長台詞を喋る。長い公演になると役者が声を枯らしながら公演に挑むことが多い。ずっと喋っている。ただ、干からびそうになりながら芝居をする石田明もまた良いのだ。

 かくして3作を経てすっかり石田明の魅力に取り憑かれてしまった。

 石田明はその後、『熱海殺人事件』に2年も2021年にも出演している。ダブルキャストのため出演回はスペシャル公演や代打登板回を含めて12公演だったのだが、そのうちの10公演を観劇した。木村伝兵衛を演じた主演の味方良介とのタッグがこれで最後だと思ったというのもあるが、改めて考えると結構、かなり、好きだな……?

 石田明は芝居がマジで上手いから出演作も多いので全てを語ることは難しいため、最後にもう1作品だけ挙げさせていただきたい。それがミュージカル『衛生』〜リズム&バキューム〜。

 動画を観ていただければわかるが、この作品は古田新太が「汚いミュージカルを作りたい」と企画した、シモの話が沢山出てくる下品だがパワフルな作品だ。


www.youtube.com

 この異色の舞台においても、主演の古田新太を筆頭に、尾上右近ともさかりえなど錚々たる役者が揃う中で決して埋もれることなく輝きを放っていた。

 そしてこの作品はミュージカル。つまり、そう、歌っているのだ……!石田明はお笑いも出来て、MCも出来て、おまけに芝居も上手いと言いましたね?それに加えて、石田明は歌も歌える!!!!!

 嘘。ちょっと嘘つきました。盛りました。というか別に歌は上手くないんだけどこの作品では逆にそれが良いというか。モテなくて、どうでもいいどころか下衆な仕事をしていて、自分に自信が無くて。そんなつまらない男が好きな女性へのひたむきで密やかな想いを胸の内に秘めている様を素朴な歌声が演出していた。

 そして、そう、この役もお察しの通り石田明が得意とする「情を捨てきれないどこか憎めないクズ人間」の役!!!最高……………ずっとクズの役やってて欲しい。

 この作品に出演した経緯にはひとつエピソードがあり、石田明本人が「ミュージカルだから」と一度断ったのにも関わらず、ルミネtheよしもとの楽屋までプロデューサーと演出家の福原さんが「どうしても出てくれ」と交渉に来たという。つまり特に演劇界では既に高い評価を受けているってワケ……!最初は「口パクでもいいから」って言われていたらしく、つまりミュージカルの概念を覆してでも呼びたい俳優ってコト……!?仕方ないよな、だってめちゃくちゃ芝居が上手いから。

 他にも『相対性浮世絵』『飛龍伝2020』などの出演作を鑑賞し、今ではすっかり石田明にメロメロである。ほらね。見てこのツイート。

 というわけで、少しでも「ノンスタ石田明がマジでただただ芝居が上手い」ことを伝えるためにこの記事を書きました。どう?伝わった?

 ていうかここまで読んだら「へー、石田明ってそんなに演技が出来るのか。ちょっと気になるな。観てみようかな?」って思った人、いるんじゃない……!?いろ。いてくれ。頼むよ。

 そんな皆様に!!!おすすめの舞台があります!!!!!!

つかこうへい十三回忌追悼公演『つかこうへいLonely 13 Blues』の『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』!

つかこうへいLonely 13 Blues | Information | 株式会社アール・ユー・ピー

 記事内にも書いた『熱海殺人事件』、『銀幕の果てに』、そして『飛龍伝2020』でタッグを組んだ俳優 味方良介との再度のタッグ!10公演観たけどまた共演するんかい!ありがとう!

 これほど共演していると親交が深く、年の差があるにも関わらずかなり仲の良い2人みたいなのですが、実はそんな2人の念願の「蒲田」なのです。

 明も気合十分。

 これはもうね、とんでもない熱量の芝居が見られること請け合いですよ。伝説の公演になると思います。

 『蒲田行進曲』は映画にもなっているので、「タイトルは聞いたことある」「映画は観たことある」という方もいると思います。明が演じるのはヤス。銀幕のスター銀ちゃんを慕う大部屋俳優で、ひょんなことから銀ちゃんの恋人である小夏を押しつけられるところから物語は始まる。銀ちゃんの子を妊娠している小夏に好意を寄せながらも、自分を心から愛せない小夏を上手く愛せず暴力を働いたり、それでもお産の費用を稼ごうと命を危険に晒す「階段落ち」に挑む役どころ。そう、またしてもクズです……!絶対に良い。

 ていうかもう正直にいうけど石田明と味方良介を再び引っ張り出してつかこうへいの十三回忌公演やって「客席埋まりませんでした」ではあまりにも申し訳が立たない(何に)(オタク特有のよくわからない目線での責任感)ので絶対絶対チケット完売させたい。お願いだから。観て。

 面白くないものを無理矢理褒めるのが嫌いなので、これはマジで本音だけど、少なからず俳優の石田明を見続けてきた私が保証する。かならず面白いものになるので。なんなら私が初日に入るから、その感想聞いてからでもいいから、日程(7月8日〜7月18日)とチケット代だけ確保しといて。

 チケット先行始まっております!

 受付期間は5月26日~5月30日ですが、一般発売も当日券販売もきっとあるので、ギリギリでも間に合います。是非。是非!よろしくお願いします!