感想文としては満点

演劇と言葉あそび

ひとりしばい Vol.4「いまさらキスシーン」

 玉置玲央はすごい。この作品を語る上でこのバケモノの存在をないものとすることは不可能で、これをネガティブに捉えているのではなく新しい「ひよりちゃん」をどう捉えるかというのが重要なのだと感じた。

 冒頭、代名詞と言える台詞から一転ポップなラップ。とにかく可愛いひよりちゃんにとんでもなく格好いい男前田先輩。手垢まみれの言葉で形容しても良いならば「顔がいい」。なんてったって「顔がいい」。驚いたのはそれはそれは似合う女子制服姿のひよりちゃんよりも男前田先輩の方に惹かれた点。ひよりちゃんのビジュアルに違和感はないのに。あの表情が本当に良かった。美しい。そう、違和感がないことに違和感があるほどに祥平君のひよりちゃんは可愛いのだ。前半は丁寧に仕上げられたように思える長く天に伸びゆく睫毛に身惚れたり、ぷるぷるの唇を堪能したり、あーピンクがかったアイシャドウも可愛いなあとぼんやりしてしまう。制服にきちんと収まる肉体を見ていると頭も良く運動も出来て可愛いけれど「とはいえ普通の女子」が若さゆえに尊大な態度を取り大風呂敷広げて敵を作ってしまっているように思える。だからこそラストに向かって駆け抜けるひよりちゃんの狂気が際立つ。胃の中のものを吐きもどすひよりちゃんが急に世界から浮き出た存在のように見えてくる。ここが玉置玲央との明確な差異。この辺りで「あー、そうだそうだ橋本祥平という役者はジャンプ力が群を抜いているんだった」と思い出す。彼はどんな俳優よりローからハイのテンションまで飛び上がるパワーがあるのだ。びしょびしょのひよりちゃんが国道4号線を引き返し駆けていき暗転。終わった…と呆然とする。あー。面白かった。中屋敷法仁とかいう変態に無理難題を押し付けられながらもやり切った橋本祥平に拍手。疲弊しきった俳優からすぐにやってみての感想が聞けるのもまたよかった。

 まだアーカイブ買えますので良かったら是非。

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