感想文としては満点

演劇と言葉あそび

記録:2021年3月

 1月にnoteに投稿した記事(綾野剛の演技に感じた「本当」への渇望〜なぜわれわれは『MIU404』に熱狂したのか)がTV Bros. note版 「マイベストカルチャー to 2021」の<銀賞 ドラマ部門賞>を受賞しました。

note.com

 かなりの年月なんらかの文章を書き続けていて、そろそろ何かしらの形で身になっていることを実感できないと困るな、という思いで応募したので結果が出て安心した。

 じつは割と自信を持って投稿したのだけれど、改めて読み返してみると全然伝える意思がまるで感じられないのでまだまだ未熟だなと思ったり。

 『MIU404』の最終話ラストシーンが格別に好きで。

 あれは明確に野木亜紀子からのわたしたちへの祈りであり、同時に共に11回の放送を駆け抜けた視聴者へのプレゼントでもあるから。

 同時に、綾野剛星野源が伊吹藍と志摩一未として積み上げてきたものがあってこそのラストであって、ゆえに『MIU404』においての綾野剛の演技について語るなら欠かせないものでもあるので、それまでの10回分の積み上げのない人たちにあのプレゼントをどのように伝えようか……と迷って、結局は曖昧な表現になってしまったなあと反省している。自分の中にある心象風景に捉われすぎずに書けきれるように精進したい。

 裏話としては、わたしにとっては2020年のエンタテイメントは『改竄・熱海殺人事件』「モンテカルロ・イリュージョン」なしには語れないので、これをテーマにしようか迷ったのだけれど、TV Bros.を配信している東京ニュース通信社は『MIU404』公式メモリアルブックを発売している会社なので、「盛り上がりの一助になればな……」と思い『MIU404』をテーマに決めた。なれたでしょうか。

 

いとしの儚-Dearest Hakana-

 0306夜

 鬼が墓場の死体を集めて作り上げた絶世の美女・儚を手に入れた博打打ちの鈴次郎と作られてから100日間経たずに女として抱かれると水になってしまう儚の物語。

 やたらと健気に男(鈴次郎)に尽くす女とぞんざいに扱う男のストーリーは正直今見るとキツいものがあるのだけれど、接触が憚られる時代に「触れたいけど触れられない」物語として世に送り出す手腕は見事。

 顔も体躯も恵まれていて、演技も上手いのに、何故かちょっとひねてて面倒な人間くさいあっくんが大好きなので、好きな荒井敦史が見られた。ザ・スズナリサイズじゃないが。質量が。

STAGE GATE VRシアター『Equal-イコール-』染谷俊之×細貝圭

 天地創造をモチーフに、7日間のテオとニコラのやりとりで魅せる作品。ダブルキャストで、日毎にキャストがテオとニコラを行ったり来たりするのだが、これが効果的で面白い。

 今年に入ってずっと面白い作品の根底には普遍のがあるのだよな……ということを考えていて、様々な作品を観ていることは、創作するにしても、鑑賞するにしてと、今後かなりキーになるのだろうなと思っているし出来るだけ多くを自分の中に取り込むのが今年の自分に課している課題のひとつでもある。

「NAOYA IWAKI Birthday Party 2020」第1部

 やさしい世界…………

すばらしき世界

 『ヤクザと家族 The Family』の副読本として鑑賞したのだが、この2作を繋ぐ北村有起哉という俳優が素晴らしい。

 俳優を追い掛けていると、まれに不思議な縁を感じる事象を目の当たりにすることがあって、「これが楽しくてこういうことをやっていたのだよなあ……」と思える。そして、こういう縁を繋げることができることこそが俳優の力量であり、かつ彼らが持つ神性でもある。『俺の家の話』に“役者の力で亡霊を浮き上がらせると。それが能だと。”という台詞があったが、能に限らず、俳優にはどこか役と肉体との繋がりの深さゆえにいつしか人ならざる力が働く瞬間があると思う。

 『ヤクザと家族 The Family』と『すばらしき世界』は、偶然同時期に放映されているだけのはずなのに、実に配役が絶妙。『すばらしき世界』の世界に井口久俊がいたこと。そして『ヤクザと家族 The Family』の山本賢治が福祉に頼ら(れ)ずヤクザの世界に入ってしまったこと。開かれた入り口にどちらも彼がいたこと。あまりにも出来すぎている。

 「ヤクザと家族」は藤井道人あるいは綾野剛の弱者へ向けるまなざしのあたたかさの話でもあるが、逆に『すばらしき世界』作中に登場した震災以降に夜の仕事に就き子と離れざるを得ない生活を送っている風俗嬢と孤独に抗いヤクザになってしまった三上の交流には弱者ではない者たちへの西川美和監督のまなざしが宿っているように思える。

 「少なくとも掬い上げてやらねばならなかった」と表現できる存在の風俗嬢と三上を並べることで、では、三上のことをどこまで自己責任とジャッジするか、掬い上げるべきと考えられるか?を問い掛けられていたのではないだろうか。

副読本:絶対忘れられない…私が警察から「前科7犯の元暴力団員」を引き取った日のこと(田中 紀子) | 現代ビジネス | 講談社

ヤクザと家族 The Family

 綾野剛、愛される才能があるというよりかは愛してくれと訴える才能がある。

 前回より北村有起哉に注目して観ていたので、中村がかなり当て馬感が強くて、こちらを切なくさせる物語として観てしまった。ラストを書き換えさせるほどのストロングさが愛を勝ち得てしまうからね…………。全力で愛されにきている綾野剛の肉体を持つ山本賢治が勝ってしまうんだよなあ。

映画『同級生』

 プロフェッショナル 仕事の流儀庵野秀明スペシャル」での庵野秀明の言葉「アングルと編集が良ければアニメーションは止めでも大丈夫」を思い出した。が、声優の演技も素晴らしいために成り立っているアニメだった。原作の美しい雰囲気を残す形の仕上がり。

3Bの恋人

 逆ハーものって一昔前のブームで、もう流行らない気がしていたのだが、特殊なマンガ的設定の中で「ふつうの」女性を演じ切ったヒロイン・馬場ふみかは素晴らしかった。いい俳優なので、『DIVE!!』も楽しみにしている。

 そして同じく流行っていないはずの「ツンデレイケメン」の王道を違和感なく突き進んだ桜田通はお見事と言うほかない。

天国と地獄〜サイコな二人〜

 日高と彩子のような関係性を「愛し合っている」以外の言葉で表したい。

俺の家の話

 味方良介出演『ドリームチーム』と『桶狭間織田信長 覇王の誕生〜』の2作と見事に放送時間が被っていたので、後から一気見した。1話から怒涛のうまさで引き込まれた。

 認知症テストでの学習障害の息子とボケかけ老人の対比。後妻業の女と疑われる女への息子の「今笑っただろ。旦那がボケて嬉しいか?」はフレーム外で。儲からない伝統芸能従事者の「寿一っちゃんもやんない!?今紹介すると5000円もらえるんだよね」というデリバリーのバイトの誘い文句。全部凄まじい角度。

 「そんなにアッサリ死ぬヤツがいるかよ!?」って思ったけど、でも、なんかそういうものだよなあという納得感もあり。その最期に美しい花を供えられたのではないだろうか。

 それにしても、クドカンに「見逃してない?伏線!回収して!伏線!」って台詞を出されるとめちゃくちゃ腹が立つ。本当にその通りなので。

桶狭間織田信長 覇王の誕生~

 馬場徹を味方良介が刺す展開はずるすぎるだろう。RUP文脈の大河ドラマかと思った。

 エンディングテーマを担当する宮本浩次が全部かっさらっていったし、そのおかげでなんだか面白いドラマを観た気になってしまい、更にずるかった。

PUIPUIモルカー

 何気に毎週真面目に観ていた。

 第10話「ヒーローになりたい」が大好きで、この回だけ録画を残している。

 この回は望めば誰だって誰かのヒーローにはなれる話だ。この明確なメッセージの力強さはどれだけの人を救うだろう。少なくとも私にとっては希望だった。

『潜熱』1巻

 Kindleで無料だったので読んだが、のっぴきならない事情がない限りはもう2度と読みたくない。

 『ダブル』をこんなに楽しんでいるのは宝田多家良も鴨島友仁も男性であるからであることを突きつけられたようだった。野田彩子が女性を描くことが怖しい。筆者の眼差しから逃れ続けていたい。

 3月5日にKing Gnu『泡』のMVが公開されたが、まだ視聴出来ていないので4月中には……。osrin監督は森山未來の大ファンらしく、かなり気合が入ってそうなので楽しみ。