感想文としては満点

演劇と言葉あそび

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」

2019年4月27日昼公演 春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」@紀伊國屋ホール

 1994年に発表されたつかこうへいの長編小説「銀幕の果てに」を戯曲化。物語は秩父山中にある大東映画撮影所を舞台に「野火止玲子」を中心に据え、時間、場所、次元、真偽さえも入り乱れて展開する。キーワードはスタア、原爆、原発、そしてハサミ。君は神なるものを何と捉えるか。

 物語が進むにつれて情報処理量が圧倒的に増え、ストーリーとしての体裁が崩れてもなお、矢島舞美のスター性が一貫して華とは何かを体現してくれていたし、味方良介の凛とした立ち姿がこの物語のテーマを伝えていた。木崎ゆりあの底力がこの作品を盛り立て、石田明が人の心とは何たるかを説き、磨世の未来が燦然と輝く。紀伊國屋ホールは還る場所だ。その時、日本もある瞬間へと還る。

 華とは何か? 矢島舞美のことだ。

 生命力とは何か? 味方良介のことだ。 

 つかこうへい作品が私たちに教えてくれるもの、それは愛の形。紀伊國屋ホールが私たちに与えてくれるもの、それは生きる力。神の怒りに触れ、閃光に包まれ、魂が浄化される。明日を生きられるわたしに生まれ変わる。母なる紀伊國屋ホール

 私は紀伊國屋ホールに神を見つけた。

 君は何を見ただろうか。君は何を見つけるだろうか。

 

 神を信じる私は大部屋女優にしかなれっこないが、大部屋女優なりに神に祈ることは出来るのだ。信じて、身を預けて、それが彼をまた神に近付けると、背負うことが愛ならばまた背負わせてやることも愛であると、信じる。