感想文としては満点

演劇と言葉あそび

記録:2023年1月

12人のおかしな大阪人2023

@紀伊國屋ホール

0111夜

陪審員として集められた年齢も職業もバラバラな大阪人たちがとある事件について議論を交わす……はずが大喧嘩が起きたり事件を再現してみたりと大騒ぎ!笑いばかりの会話劇。

タイトルを見てわかるように『十二人の怒れる男』のオマージュ作品だが、勉強足らずで元になった作品を鑑賞したことがないためその視点から語れることはない。オマージュ元も今作と同様に陪審制度によって集められた陪審員が1つの事件について議論する密室劇らしい。

『12人のおかしな大阪人2023』を観劇した感想としては、散々「しゃべくり演劇」をやった後に突然いい話風にストーリーが収束していった印象があった。

──脚本には結構、加筆修正が行われていましたね。

わかぎ 1995年版は、キャストによってセリフ量が全然違っていて「12人そろえるためだけに作ったんやろうな」って思うような役もあったんです。だから12人が全員、絶対不要ではないように台詞を整理しました。あとは、義一が演じる議長役の男が、ラストで「時限爆弾をしかけた」という嘘をついて、全員が「いいかげんにせえっ!」ってツッコむというオチが、28年前から嫌で嫌で(笑)。

うえだ オチとしてはちょっと弱いですよね。「え?」って、カックンとなる。

わかぎ 「何のために、これやらなあかんねやろう?」と。これだけは絶対にせえへんと思って、ラストの部分は全部書き換えて、ちゃんと芝居らしくしました(笑)。

伝説のコメディ『12人のおかしな大阪人2023』わかぎゑふ×うえだひろし×木内義一に聞く。「人がしゃべるってすげえな、と思っていただけたら」 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

後日インタビューを読んでラストを全とっかえしていると知り、納得した。

個人的には「しゃべくり演劇」的な部分で充分に楽しめたのでラストの出来の悪さはあまり気にならなかったが、ひとつの作品として統一感がない仕上がりであったのは否めないと思う。

隣県と行き来して生活していた大阪出身者なので、ひと口に「大阪弁(関西弁)」といっても少し場所が違うだけで全然イントネーションや訛り方がちょっとずつ違うなどのエピソードに「わかり」があり私は笑ったが、(それ以外のネタも含めて)東京では確かに通じづらいだろうというのも課題であっただろう。それは券売も含めて演者側の方がひしひしと感じていたとは思うが。

良かった話をすると、途中、牛丼屋で「熱海」で言う「浜辺のシーン」が始まったのだが、今江さんの大山金太郎っぷりかなり良かった。

多和田さんのファンとしては直近の出演作である梅棒 15th “RE” PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』に登場した朗希のような見た目で関西弁を喋り倒しているのが新鮮でもあり、低いスタンスで紀伊國屋ホールで喚き倒しているのが馴染み深く感じられるようでもあり、サービス精神たっぷりのエンターテイナー多和田任益としての姿も堪能出来て楽しかった。

私は多和田さんのファンであり多和田さんのマネージャーのオタクだが、今回は特にマネがスタッフブログで教えてくれた仕事を受けた意図や多和田さんへ課された課題について実際に作品を観て納得感があったため、単に作品だけの面白みだけではなくそういった面でも面白かったと思っている。

これはあまりよくない心の機微かもしれないが、きちんと「意味」を感じられる他人の行動というのは安心するし気持ちがいい。

暴太郎戦隊ドンブラザーズショー ドン3弾 特別公演「〝キジのおんがえし〟.....という おはなし」

@シアターGロッソ

0121

志田こはくさんは身軽でアクションが出来るところとアドリブが効くところが魅力的だと感じた。

間近で大男たちに囲まれている姿を見ると、改めてちいさくてかわいい。

新・幕末純情伝

@紀伊國屋ホール

0131夜

かなり新鮮なつかこうへい作品に仕上がっていて、「新時代が来たなぁ」と思ったものだった。結局のところ今年の熱海(『熱海殺人事件 バトルロイヤル50’s』)には荒井敦史がカムバックする上に池田純矢が参戦するわけだが。

どういうところが新鮮だったかというと、端的に言ってしまえばモラ男がいなかった点だ。

私はつか作品に登場するモラ男にモエモエになるのが好きな観客であり、坂本龍馬役の松大航也はそういう見せ方をすると思っていたのだが(というか本来坂本龍馬とはそういう役なんではないか)妙に優しい男として表現されていた。

加えてインテリジェンスもなく、芝居が上手いわけでもないのだが、とにかく「優しさ」と可愛げだけはある。不思議な魅力だった。劇中、龍馬が「泥食ってみたんだけどよ」って言ってる時に松大龍馬のキモはここかぁと。龍馬が本当に泥を食っている必要もないのだけれど、笑顔で桂のためにしっかり泥食ってくれる坂本龍馬だった。

単に松大自身の人となりなのかなとも思うのだが、しかし令和の世にあるべきつかこうへい作品とはこういうことなのかもしれないとも考えた。その新しさを見せてくれたのが「新時代」を夢見る『新・幕末純情伝』という題材であったことは重要なことであったと思う。

背中見てきた人が全然いない紀伊國屋ホールでは、みんなそれぞれのバイオリズムで生きてる。しかし次世代スタァさんが出てきていない状態でいつメンもほぼ不在の中、ゆっかー総司の「どうして僕には……」の下りで訳もなくボロボロ涙が溢れてきたから「この『新幕末純情伝』は大丈夫だな」と思ったのが印象的だった。

THE FIRST SLAM DUNK

なんか50万点マイナスらしいブログを読んでくれよな!バカヤロウ満点に決まってんだろ!

『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』

有村架純演じる石子と中村倫也演じる羽男の関係が「BL的」という感じなのが良かった。

物語が進む中で石子は赤楚衛二演じる大庭という男と恋人関係になるのだけれど、側から見てる感じ羽男との方がよっぽど信頼関係を築いてるんじゃないかってくらい「イチャイチャ」してるように見える。しかし石子と羽男はどこまでもそんなんじゃないし、まして三角関係とかにもならない。そういうところが良かった。
弱い者に寄り添うマチベンと法律をきちんと描こうってドラマだから複雑な人間関係はむしろノイズだけど、有村架純中村倫也のイチャ……もちょっと楽しめるいい塩梅。

『ブラッシュアップライフ』

第1話めちゃくちゃ良かった。安藤サクラ演じる近藤麻美が交通事故死してしまい希望の生物に転生するべく徳を積み直しに現世を最初からやり直す物語なのだが、第1話はかなりの尺を「1周目の人生」で地元の幼馴染のなっち(夏帆)とみーぽん(木南晴夏)と集まって思い出話とかくだらない話をしているのに使っていて転生ものとしては変ではあるけどこれがむしろ良いというか、この3人の会話だけをずっと聞いてたい。「あ〜〜バカリズムの脚本だ〜〜」って感じの心地よさ。