感想文としては満点

演劇と言葉あそび

「血」を選ばれた少年たちは「血」を振り切り地球を守るか

 「ワールドエンドヒーローズ」第1章「認可試験」感想

  「ワールドエンドヒーローズ」は隕石とともにやってきた謎の生命体イーターと闘うヒーローこと高校生の少年たちをプレイヤーが指揮官としてまとめ導くソーシャルゲームだ。メインストーリーの第1章では男子高校生・三津木慎がひょんなことからヒーローとしての適性を見出され、ヒーローになる決意をし、所属する崖縁工業高校をヒーローの認可代表校にするべく仲間と共に奮闘する姿が描かれている。あらすじだけでは単調なヒーローアクションストーリーのようだが、崖縁工業高校を阻む存在やヒーロー同士の確執やバトルもあり魅力的なストーリーだった。

 

 この章で崖縁工業高校の他に登場する白星第一学園は崖縁工業高校の代表校認可を阻むライバル的存在として描かれる。白星第一学園は世間では「スカウト入学主体のエリート校」と呼ばれているが、その実態は星乃家とその関係者がほとんどを占めるという高校だ。三津木のヒーロー適性診断の際に三津木の親族のヒーロー適性者が調査されていることからも読めるようにヒーロー適性を持つには遺伝的な要素が含まれているらしいことを踏まえると白星第一学園に星乃家の関係者が多いことに合点が行く。つまり代表校認可枠を奪い合う形で白星第一学園、もとい星乃家が様々な手を使い崖縁工業高校の邪魔をしているのだ。また、そもそもこの作品においてヒーローに変身できる条件がヒーローになる際に必要なリンクユニットに反応する特別な「血性」を持つことを鑑みると、遺伝…つまり「血統」、そして直接的にヒーロー適性に関わる「血性」のふたつのワードからこの作品は「血」に係る作品でもあるのではないかと想像した。調べてみると第1章で登場する白星第一学園の他にもミッション系の高校や新興宗教団体が母体の高校という少々パンチの効いた設定の高校も登場するようで、この点にも示唆を得た。特に高校以降の進学先は家庭環境に左右されやすい上に、特に宗教は家族の事情を引き継ぎやすいからだ。直接的なヒーロー適性である「血性」と「血統」のふたつの「血」によって少年たちの運命が左右しているというわけだ。彼らがヒーローとして活動する中で「血」に惑わされることなく協力し戦い地球を救うのか。それともそうはいかないのかという点でも先の展開に興味を掻き立てられた。