感想文としては満点

演劇と言葉あそび

SOLO Performance ENGEKI『HAPPY WEDDING』 #ハピ婚 レポート

ひとまず核心に触れない公演レポートを。後日ラストシーンを含んだ内容を追記予定。

客席の扉が開き、金の長髪を束ねて白いタキシードに身を包んだ新郎・遠藤春彦が入場する。式場を歩いてゆき、新婦・未知の椅子を引きエスコートをした後に自身も席に着き椅子の上で膝を抱えて座り込む。客席の緊張感も相まってどこか異様な空気を纏いながら“HAPPY WEDDING”は始まる。

式は、春彦が勤めるお好み焼き屋の店長の挨拶に始まり、未知が依頼した男が乾杯の音頭をとり、新郎新婦の友人がそれぞれに余興を、とつつがなくとはいかずとも一般的な流れを汲んで進んでいく。

梅津ファンならお馴染みの「味」がする店長が慣れないスピーチを披露したかと思えば、やたらと横文字を使うコンサル業のこれまた癖の強い男(……は実は新婦の元夫でこの結婚には納得がいっていないらしい)が登壇し、春彦のバンド仲間は自作のミュージカルを、未知の同僚の女性たちは何故かこのおめでたいハレの日に人体切断ショーを披露。バンド仲間は2人、同僚の女性たちは3人いるようだがその表現もさすがの演技力で全員が「見える」ようだ。

矢継ぎ早に繰り出される奇怪な人々のパフォーマンスはそのどれもが強い個性を放ち、さながら梅津瑞樹が表現出来得る総て全部盛りのオンステージであり、「変わり者揃いの結婚式」というテーマでワンシチュエーションの連続性があるコントをいくつも楽しんでいるかのようでもあった。

店長が語った「春彦は27歳で死ぬらしい」との言葉、バンド仲間の衝撃の暴露と、更にはカメラマンの役割を託された新郎の弟アキが語る「兄ちゃんの普通の優しさが写ってない」。それぞれのキャラクターの単発的な可笑しさの上に違和感が積み重なっていく。突き抜けた演技の中にも小さな違和感を蓄積させていく正確な芝居には脚本の妙の助けを感じつつも終演後にはこの巧みさに感嘆した。

彼のことを少しでも知っている方ならば激しく突き抜けた「奇人」的なイメージが先行するかもしれないし、実際そのような面でも複数のキャラクターでバリエーション豊富に存分に楽しませてくれたのだが、個人的にはとあるシーンでそういったゴテゴテの皮を丁寧に剥いでいったかのように静かに感情を表現する様がグッときた。

静と動、どちらでも魅せてくれたこの作品は梅津瑞樹に少しでも興味があるならば楽しめる作品になっているはずだ。

アーカイブ配信は3/4(土)まで

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