感想文としては満点

えんげきとことばあそび

自由研究:『初級革命講座飛龍伝』の理解を深める

漫画『ダブル』ドラマ化だーーーー!!!!!

ダブル | オリジナルドラマ | WOWOW

 というわけで、記念に弊ブログの記事の中でも多くアクセスを頂いている記事「『初級革命講座飛龍伝』から読み解く漫画『ダブル』 - 感想文としては満点」を書くにあたり研究したつかこうへいの作品『初級革命講座飛龍伝』への理解を深めるために様々な資料に当たった記録を残したいと思います。

 上記ブログ更新から数ヶ月後、つかこうへい作品を多く手がけている演出家の岡村俊一とつかこうへいと縁が深い劇場である紀伊國屋ホールの元支配人の鈴木由美子のインタビュー記事(演出家 岡村俊一、紀伊國屋ホール 鈴木由美子インタビュー - コミプレNEWS)が公開。聞き手は『ダブル』作者の野田彩子。

 この記事によると、野田が初めて観たつかこうへい作品は2015年に紀伊國屋ホールで上演された「つかこうへいTriple impact(つかこうへい Triple Impact | Information | 株式会社アール・ユー・ピー)」の『初級革命講座 飛龍伝』であり、この体験が基になって生まれたのが『ダブル』だという。要するに『ダブル』は「初級」を中心に据えた物語であり、「初級」を知ることが『ダブル』をより深く理解するキーになることは言うまでもないだろう。

 『ダブル』ファンの中でも「初級」を履修したい方を何人か見かけました。しかし初演が1973年とかなり前で、改訂版も多くあり、情報が煩雑なため、私が可能な範囲で調べたことを共有することで漫画『ダブル』から「初級」やつかこうへいに興味を持った方の助けとなれば幸いです。

 そして、この記事でよりつか作品への興味が深まった方におかれましては是非劇場へも足をお運びいただければ嬉しいです。今年はつかこうへい十三回忌の節目の年なので各団体が公演を打っております!気になったものを是非。(と書いてたら『初級革命講座 飛龍伝』が上演されることが決定しました!)

戯曲を読む

 戯曲。つまり上演台本は、劇場で作品を観劇する以外では最も作品に近づける媒体。つかこうへいの作品は戯曲を無料公開していて(つかこうへい演劇館

https://www.trend-share.com/tuka/engekikan3/)、「初級」もラインナップにあるにはあるのだが、これは改訂されたものでストーリーも登場人物もかなり異なるので『ダブル』の理解を深めるために読むにはまるで参考にならない。

小説版を読む

 となると、出版されている小説版にあたるしかない。

 まず手に取ったのは小説&戯曲 初級革命講座飛龍伝 中学三年生用童話 飛龍伝(トレンドシェア)。これは新宿の紀伊國屋書店4Fの演劇コーナーで購入した。先日も棚に並んでいるのを確認したので、おそらく購入出来る。リンク先では価格が跳ね上がっているが、当然書店では定価で購入可能。

 

 この書籍は小説版、戯曲版、童話仕立ての熊田留吉の息子が主な登場人物の物語の三本立て。

 小説版は舞台の「初級」と比べて登場人物が多く、熊田留吉やアイ子は登場するが、機動隊の山崎は登場せず、代わりに同じような立ち位置の影山という男が登場する。三人芝居の「初級」とは内容もかなり違うが、影山が熊田にサンオイルを塗ってやりながら「これは俺の負わせた傷だよな」だとか見慣れない傷に対して「誰からやられたんだ。一体、何機動隊なんだ」と問い詰めたりする描写に、熊田と山崎の間にある特別な関係性や執着のニュアンスを感じられる。

 戯曲版は前述した無料公開されているものと同一の内容だ。

 童話仕立てのものは熊田留吉の息子を中心に据えられた物語で、2020年に上演された『飛龍伝2020』に近いように思う(『飛龍伝2020』は日本演劇界の傑作なので是非機会があれば観て欲しい。たまにCS放送をしている。)

 一通りさらって、より舞台の「初級」を理解出来る書籍はないものかと考え調べたのだが、容易に手に入らないものも多いので図書館に向かうことにした。

 蔵書検索でいくつかピックアップしたものが以下のラインナップ。

ピックアップした書籍

 本を開いてみると、なんとトレンドシェア発刊の小説版と全部同じ内容だった。

 がっかりしながら「これ以上はやはりどこかの団体で上演されるのを待つか何らかの方法で戯曲を手に入れるしかないのだろうか……何か上演当時の記録がインターネットに残っていないだろうか……」と藁にもすがる思いで調べていると論文にぶち当たった(つかこうへいと「歴史」)。PDFをダウンロードすると読むことが出来る。

 この文章では「初級」を軸につかこうへいの作品が演劇界にどのような影響をもたらしたのかやその必然性について論じられている。内容も興味深く面白いのだが、上演と刊本のリストが掲載されている。

 これによると1973年に初めて上演されて以後、1977年に小説版『初級革命講座 飛龍伝』が発刊されるまでの間の1975年に発刊された『熱海殺人事件』に収録されているとある。ということは、1975年発刊『熱海殺人事件』に所収されているものは小説版とは異なる内容なのではと考えた。出向いた図書館には無かったが、取り寄せを依頼し読んだら、これがビンゴだった。

 登場人物が「父」「嫁」「男」の三人。舞台版の三人芝居に一番近い人物構成になっており、父は熊田、嫁はアイ子、男が山崎の立ち位置にあたる。

 『ダブル』本編でも印象的な「春か、春をひさいでいたのか。」の台詞もあり、私が知り得る限りではこれが書籍の中では『ダブル』本編に登場するものに近い。文章によって理解を深めたい方にはこれがおすすめだ。

舞台を観劇する

 どうしたってこれ以降が本題になってしまうのだが、絶対紀伊國屋ホールを満員御礼にしたいので最後まで読んで欲しい。

 冒頭でも紹介した通り、野田彩子が『ダブル』を着想するきっかけになったのが、RUPがつかこうへい作品を三本立てで上演した「つかこうへいTriple impact」のうちの『初級革命講座 飛龍伝』(当時の稽古場レポート:観劇予報 : つか芝居の原点が熱く燃え上がる『初級革命講座 飛龍伝』稽古場レポート)だ。

 つかこうへい作品は役者や演出につかこうへいとの所縁のある団体もそうでない団体も数多上演されているのだが、「つかこうへいTriple impact」を上演したRUPはつかこうへいとの所縁がある団体のうちのひとつだ。その団体がつかこうへい十三回忌公演として行う演目のうちのひとつに『初級革命講座 飛龍伝』を上演する。

 更に、宝田多家良が演じる熊田留吉を当時と同じ役者 吉田智則が演じる。演出も当時と同じく、インタビュー記事にてインタビューを受けていた岡村俊一だ。つまり『ダブル』を産んだ「初級」にこの世で最も近い作品を今なら観劇できるということだ。

 「初級」はショーアップされた『飛龍伝』より上演されづらく、更に当時と限りなく近い条件で公演が組まれることは今後ほぼ確実にない。当時の熱をほぼ近い形で感じられるこの機会を絶対逃さないで欲しい。必ず『ダブル』への理解が深まるはずだから。公演期間は短いが、『ダブル』ファンは絶対に紀伊國屋ホールに駆けつけて欲しい。

 

宣伝

 『初級革命講座 飛龍伝』と連続上演される『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』も是非一緒に観劇していただきたいです。

 『飛龍伝2020』では桂木と山崎を演じた味方良介と石田明NON STYLE)のコンビが再度タッグを組みお届けされる念願の「蒲田行進曲」。

 ものすごく端的に説明してしまうと、銀幕のスター銀ちゃん(味方良介)

が妊娠した恋人の小夏(北野日奈子)を自分を慕う大部屋俳優ヤス(石田明)に押し付けるところ物語。今の感覚からするとおかしなストーリーにも思えますが、その裏にある感覚を掴み取っていただきたいです。

 特に人間臭い芝居が魅力の石田明が人間や愛の力を伝えてくれ、そして味方良介演じる銀ちゃんがスターの背負うものの大きさや力強さ、葛藤の中に幸せの形を体現してくれるはずです。是非味方良介の生命力、石田明の人間とは何かを語る力。体感してみてください。何より2人の間にある信頼関係を感じられると思います。

 

蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』

公演期間:2022年7月8日(金)~7月18日(月祝)

チケット料金 8,500円(全席指定・税込み)※未就学児入場不可

『初級革命講座 飛龍伝』

公演期間:2022年7月22日(金)~7月25日(月)
チケット料金 6,500円(全席指定・税込み)※未就学児入場不可

詳細:つかこうへいLonely 13 Blues | Information | 株式会社アール・ユー・ピー