感想文としては満点

演劇と言葉あそび

4月の観劇まとめ

 4月は週1ペースで紀伊國屋ホールしか行ってない。偏りを感じるが、春の紀伊國屋には神様がいるので仕方ないな。ちゃんと感想を書いていてえらい。

春のつかこうへい復活祭Vol.1「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」

@紀伊國屋ホール

0408エキサイト公演/0414/0420昼/0421

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.1 「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」 - 感想文としては満点

 記事にも書いたけれど、今年の熱海は丁寧に作られていて本当に良かった。

 エキサイト公演はゲストが出演するという触れ込みだったはずなのだが、何故か役者が好き勝手するだけの公演になっていた…いいのか…まぁいいか…。恐らくエキサイト公演は大石さんの大山金太郎チャレンジ公演だった。

▼エキサイト公演概要▼

 

春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」

@紀伊國屋ホール

0427昼

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」 - 感想文としては満点

 とんでもないものが制作されてしまったものだなあ。矢島舞美(野火止玲子)のスター性なしには上演不可能な作品なので、次は何年後に観られることやら。もう一度くらい観ておくんだったなと思う。

 それにしても矢島舞美のオタクがアツい。掲示板では味方と矢島さんが付き合ってることになってたり、熱いポエムを披露するオタクがいたり、そのオタクを心配するオタクがいたり、とんでもなく面白い。若手俳優のオタクと違って堂々と演出家に喧嘩ふっかけるので最高。 

 次回公演の際には流石にもう少しいい感じのカメラ用意しておいて欲しい。

3月の観劇まとめ

 あっという間に5月に突入してしまったので急ぎ足でまとめを更新します。幅広く色々観劇出来た良い月だったのではないかな。

MANKAI STAGE『A3!』AUTUMN&WINTER

@梅田芸術劇場メインホール

0303昼

 良いところも多くあるけど、つまらないところを凌駕しないなと感じる。この「つまらないところ」は決して「悪いところ」ではなく、故に虚しさがある。つまりはノットフォーミーだな。

 実は春夏公演時も、私が観るべきものというよりかは若手俳優向けの教材ビデオみたいだなという感想を持っていて、今回もそのように思った。雄三さんの台詞はその通りなのですごい。

 

舞台「仮面ライダー斬月」鎧武外伝

日本青年館ホール

0321昼/0321夜

 まさに大人のためのヒーローショーでした。エンターテイメント寄りの演劇。

 増子が謎の凄みを出し、原嶋が吼え、宇野が優勝してた!!!!!

 宇野さん、手塚キャスト出身なのにフォラスみたいなお調子者キャラすごく似合うんだな。地の人の良さが出るというか、どこか憎めない感じが絶妙。久々に姿が見られて嬉しかった。

ミュージカル ロミオ&ジュリエット

刈谷市総合文化センター

0324昼

 前回の公演で平間マキューシオに恋した人間だったのですが、今年の平間マキューシオは目を血走らせすぎていて怖かった。なんだったんだ。

 

春のつかこうへい復活祭Vol.1「熱海殺人事件 LAST GENERATION 46」

COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

0330チャレンジ公演

 石田さん不在回。久保田さんの熊田はもはや金太郎のお父ちゃん。

boogiewoogie.hatenablog.com

 ちなみにTTホールの所感を書いておいたので載せておきます。ご観劇の予定がある方は参考にしてください。

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.1 「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」

 週に1度は紀伊國屋ホールに通い「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」を観劇した3週間は、大阪でチャレンジ公演を観たその日に夜行バスに乗り込み関東方面へ越してきて生活に慣れるまでの3週間でもあった。その間に「東京に慣れる」あるいは「東京に染まる」とはどういうことか沢山考えた。

 「東京に慣れる」ということは自分を見失わないことではないか。東京だからって街中を歩いているのはお上品な人間ばかりではないし、東京に生まれた者だけが住んでいるわけではない。むしろそうではない人間の方が多いようにすら感じる。そのような雑然とした環境で地方出身者である自分と生来染み付いた癖を、受け止め、コントロールし、いかに自分らしさを失わないでいられるかが、都会でうまく生きる方法だと感じている。

 爪も髪も赤くして東京に染まったつもりのアイ子より、いつまでも長崎弁を話し、カフェバーでコーヒーを値切ることの出来る大山金太郎の方が、よっぽど強く、都会で生きるのに向いた人間であるように感じるのは、私が昭和よりはよっぽど個々が尊重されるようになった平成の今を生きているからだろうか。

 初めて「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」を観劇した時、今泉佑唯の才能に驚いたものだ。度胸があり、芝居が上手い。喉も強い。「熱海殺人事件」といえば、私が観てきた中では、若さと才能を持て余した金太郎を縁の下の力持ち的に支える形でアイ子が存在していた印象だったが、今年の金ちゃんはとことんアイちゃんに尽くす金ちゃんだった。今泉さんの才能に付き従うように佐藤友祐の優秀さがあったように思う。今泉さんの溢れんばかりの才能に耐えうる器を求めた結果のキャスティングだったのではないか。

 そんな金ちゃんだったから見えてきた「金ちゃん」像がある。必死に五島の思い出を語る金ちゃんはアイ子に東京での生き方を教えていたのではないか。金ちゃんが「……おいが職工じゃからね」と問うたのはアイ子にせめてものプライドを持たせてやりたかったからではないか。大山金太郎はアイ子のために、東京に染まったアイ子を殺したのではないか。そう考えると、木村伝兵衛の「踏ん張れば殺さんでも良かったんだ」がより活きてくる。金太郎の目に、アイ子の胸の奥に眠っていた「五島のアイちゃん」は映らず終いだった。

 昭和に生まれ、平成を生き抜いてきた「熱海殺人事件」。今年の熱海はまさに平成最後の年に相応しい作品だったと言えるだろう。パンフレットやインタビューでも語られていたが、個々の考えを共有し考え抜かれた作品作りがされていたようでキャストそれぞれに作品に対する理解が見えた。ただ勢いに任せて体当たりで挑んだものではなかったことは観劇した誰もが感じられただろう。優秀な人材で、より丁寧に描くことで、次世代にも耐え得るような補強作業がされていた。大事なのは戯曲ではなく、根底に流れる精神であり、演劇はきっといつまでも自由だ。

 新しい時代も、この作品は生き続ける。いつの時代にも変わらぬ人間の心を伝える為に。平成最後の「熱海殺人事件」を、それが実現出来るだけの作品に仕上げた“最後の世代”の皆さんに、賛辞を込めて。この作品に対する愛を添えて。

【本日の現場】春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」

2019年4月27日昼公演 春のつかこうへい復活祭Vol.2「銀幕の果てに」@紀伊國屋ホール

 1994年に発表されたつかこうへいの長編小説「銀幕の果てに」を戯曲化。物語は秩父山中にある大東映画撮影所を舞台に「野火止玲子」を中心に据え、時間、場所、次元、真偽さえも入り乱れて展開する。キーワードはスタア、原爆、原発、そしてハサミ。君は神なるものを何と捉えるか。

 物語が進むにつれて情報処理量が圧倒的に増え、ストーリーとしての体裁が崩れてもなお、矢島舞美のスター性が一貫して華とは何かを体現してくれていたし、味方良介の凛とした立ち姿がこの物語のテーマを伝えていた。木崎ゆりあの底力がこの作品を盛り立て、石田明が人の心とは何たるかを説き、磨世の未来が燦然と輝く。紀伊國屋ホールは還る場所だ。その時、日本もある瞬間へと還る。

 華とは何か? 矢島舞美のことだ。

 生命力とは何か? 味方良介のことだ。 

 つかこうへい作品が私たちに教えてくれるもの、それは愛の形。紀伊國屋ホールが私たちに与えてくれるもの、それは生きる力。神の怒りに触れ、閃光に包まれ、魂が浄化される。明日を生きられるわたしに生まれ変わる。母なる紀伊國屋ホール

 私は紀伊國屋ホールに神を見つけた。

 君は何を見ただろうか。君は何を見つけるだろうか。

 

 神を信じる私は大部屋女優にしかなれっこないが、大部屋女優なりに神に祈ることは出来るのだ。信じて、身を預けて、それが彼をまた神に近付けると、背負うことが愛ならばまた背負わせてやることも愛であると、信じる。