感想文としては満点

演劇と言葉あそび

ミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズン 青学VS六角

2017年1月3日 @メルパルク大阪

 跡部キャストの特技であるバレエが盛り込まれている辺りも含め、劇場が可能性に満ち満ちた空間になるのがテニミュの魅力だよなあと改めて思った公演。“跡部様がバレエ”を正解にしたのはその他をきっちりと演じることが出来ていた跡部含め氷帝の実力ありきだと思う。まぁそれでも突然のバレエには笑いを禁じえないわけですが!しかし氷帝はなんだかチームとして完成された雰囲気だったし、それがすごく好きでした。

 青学メンバーが新キャストになって、初めて初公演から青学メンバーを見守ることになる(予定)であることがとっても楽しみ。今のところは、少年漫画然としたリョーマの主人公力の高さと不二くんの少女漫画のような美貌に惹かれています。

Johnnys’ Mr.KING SUMMER STATION 14:30公演/18:30公演@EXシアター東京

2016年8月12日 Johnnys’ Mr.KING SUMMER STATION 14:30公演/18:30公演@EXシアター東京

 正直めちゃくちゃ楽しかったことしか覚えてないのだけれど、高橋海人くんの才能が燦々ときらめいていたのは確かだったと思う。私の楽しかった2016年の夏をかたちづくるひとつのものであることは間違いないです。

女体シェイクスピア008『艶情☆夏の夜の夢』

2016年8月19日 女体シェイクスピア008『艶情☆夏の夜の夢』夜公演 @ナレッジシアター

 シェイクスピア「夏の夜の夢」を日本風にアレンジ、女性のみで演じるというもの。シェイクスピアの演劇は元々男性のみで演じるものだったんだそうで、そういう点でも面白い試み。アフタートークで脚色・演出の中屋敷さんが、“シェイクスピアが好きで古典は堅苦しく思われがちだがそう構えずもっと色んな人に観てもらいたい”というようなことをおっしゃっていたが、『夏の夜の夢』を日本風にアレンジした表現は「日本人である観客がとっつきやすく わかりやすい」だけでない、説得力があったように感じた。役名地名はそのまま、しかし登場する職人は何故か江戸っ子気質、アテネ公シーシアスの結婚を祝う祭りは市民が円形にせりあがった舞台上をぐるぐると盆踊りで祝う。しかしそれが何故かリアルに感じる。日本語に翻訳して、舞台を日本に置き換えただけではない魅力がそこにあった。

 初めて柿食う客の演劇を観たのだけれど、役者がみなピカピカの存在感があるものだからすごい。すごみと言えばよいのか、その魅力にのめりこむしかなかった。これもアフタートークで知ったことだが韻を踏んだリズムよい台詞回しはシェイクスピアの特徴らしい。魅了的な役者から放たれるつるつると滑るような台詞と、間がよく何から何までするする事が進む様は胸をすくようで観ていて聴いていて気持ちがよかった。目の前のたのしいことしか考えなくてよくて、夏の夜の酔狂みたいな喜劇に酔うのはたいそう気分が良く、この演劇そのものが“真夏の夜の夢”のようだった。

 なにも考えずに取った切符を手に当日になってやっとそういえば“劇団”と冠する集団の演劇を観たことがないなあと気付いて一抹の不安すら覚えて会場に向かったのだが、今まで観てきた演劇はこういうのを目指していたんだろうなあとおもうほどの完璧さで何もかもがちょうどよく、初めてなのに身体に馴染んだ。小ネタもキキすぎず、笑いたい人だけ笑えばよい心地よさはこういう場でしかない感覚かもしれない。

 

 

 

 

 以下はアイドルファンとして興味深かった中屋敷さんのオフタートークでのお話についての話。「」内が中屋敷さんの言葉。

「女性パフォーマンス集団はバラエティ豊かで色んな魅せ方がそれぞれあって面白い」という話の中で「男性のパフォーマンス集団って“カッコイイ男性”ひとつの形しかない」という話をされていて、まさにそうだなと思った。もちろんその“カッコイイ男性”像の中においては様々に幅もあるわけだけど、しかし目指すのはどれも同じといえばよいのか。同じか、逆に振り切るか。意識している時点でどちらにしろ“お手本”はつまり同じ。長い間“ジャニーズ”が台頭していた弊害だとおもうが、そこが面白くもあるとおもう。中屋敷さんが“それ”以外のパフォーマンス集団を確立させたら面白いプロジェクトになりそう。

きみに突き抜けるような青い空を見た

2016年8月27日 Summer Paradise 2016 ハシツアーズ〜もうかわいいなんて言わせない〜 @TDCホール 夜公演

 彼の為に誂えられたステージングはまるでジオラマの類いのような精巧さで、完璧に調律されたそれは作品としての矜持を持ち気高く美しい。その完璧さからステージと客席の間には人形を外界から守るアクリルのような隔たりを感じるのに、しかしステージ上部に配置された雲のオブジェ、あるいは彼の歌声によって突き抜けるような高い高い青空も同時に感じる。青年になりいくらか力強くなった彼の歌声だ。完璧でありながらも「空」という不確定要素を孕んだ「ハシツアーズ」という作品は、青く高い空は、彼そのものなのだと知る。

 彼の四年間、あるいはもっと長いアイドル生活のすべてを集約したようなセットリストは、ポップスも、バラードも、ダンスミュージックも、クラブミュージック調にアレンジされた楽曲も、すべてがちょうどよくセットリストに組み込まれ、その選曲も新しい楽曲からよく知った曲まで、ちょうどよいバランス。けれどどの楽曲ひとつとっても過去のものそのままなわけではなく、“もうかわいいなんて言わせない”の文句は触れ込み通りだから感心した。ちょうどよいサイズのハコのちょうどよいくらいの距離感にある座席でちょうどよいそれを観て聴いた。“ちょうどよい”はこの世でいちばん心地よい感覚かもしれない。その心地よい空間の中で彼の奔放さと、彼がこのコンサートへ込める想いだけが多過ぎるくらいにあった。未来を感じる。

 「かっこいいって言ってもらいたい」と語った彼のこのコンサートへの思いはこの作品においてのみの特別なものではなく、彼は、いつもそうだ。愛にあふれたひとだとおもう。たぶん私たちだけでないひとから受けた愛をもぜんぶかえしてくれる。そうやって輝くひとだ。彼がもっとおおきくおおきくなる時も、それでもなお“ちょうどよい”作品と、少し大きいくらいの奔放さと、溢れんばかりの愛を届けてくれたらいいのになあとおもう。退かず、媚びず、そして少しだけ顧みて欲しいなあ。