感想文としては満点

すきなようにすきなものを

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン青学VS四天宝寺のしおり

 開幕しました、四天宝寺公演! すっごくすっごく楽しいです。公演に行く度にチケットが増えております。ずっとずっと観ていたい。

 今回の四天宝寺公演は、キャストに元ジャニーズJr.の千田くんや既に俳優として活躍しているキャストが起用されたり、他の舞台でファンをつけて帰ってきたであろうキャストがテニミュに帰ってきている公演ということで、初めてテニミュを観る方も多くいらっしゃると思います。わたしもジャニーズファン時代の友達を誘いました! かつ、出演校が他の公演に比べて多めで構図が多少複雑であることを踏まえて、四天宝寺公演で初めてテニミュを観る方のために公演の補足記事を書くことにしました。

 この記事では、極力四天宝寺公演の解説というよりもあくまでこの公演だけ観た時に必要な補足として、前回公演までの記憶を引き継ぐ程度に留めました。というのも、テニミュは(特にプレイの)解説が多い脚本であるし、わたし自身が原作未読で3rdシーズン(山吹公演)からファンになったこともあり、事前情報無しに初めてテニミュを観た時の楽しさが衝撃的だったので出来ればその新鮮な楽しさも味わってもらえたらと考えているからです。

 とはいえ、わかりやすく、かつ記憶を整理するためにストーリーの流れに沿って書いているので(試合結果は書いていません)どうしてもネタバレが許し難い方は読まないでいただきたいです。

 

 ちなみに全国大会ではS3(シングルススリー)→D2(ダブルスツー)→S2→D1→S1という流れで試合が進み、3試合勝てば勝利です。

 

 四天宝寺公演において試合に参加しない青学(青春学園を略してせいがく)テニス部員

青学1年生トリオ

 堀尾聡史(ほりおさとし)、加藤勝郎(かとうかちろう)、水野カツオ(みずのかつお)の3人で構成される。テニミュに登場する青学テニス部1年生はこの3人と主人公の越前リョーマ(えちぜんりょーま)の4人。レギュラージャージを着ていないのが1年生トリオ。

大石秀一郎(おおいししゅういちろう)

 青学テニス部副部長。大石の領域(おおいしのテリトリー)などの技がある。

 大石の領域:シーズン6作目・立海大附属中学との関東大会決勝戦 通称関東立海公演D1大石秀一郎菊丸英二VS仁王雅治・柳生比呂士にて初披露されたゴールデンペアの超攻撃型フォーメーション。

菊丸英二(きくまるえいじ)

 大石秀一郎と共にダブルスを組むことが多く、その相性の良さから“ゴールデンペア”と呼ばれている。

 大石とはサインなしでお互いの考えていることがある“同調(シンクロ)”という状態になることが出来る。この同調は、テニミュの演出では特殊なポーズと黄色い照明により表現される。

忍足謙也(おしたりけんや)通話シーン

 通話相手の忍足侑士(おしたりゆうし)は氷帝学園(青学とはシーズン4作目の関東大会氷帝戦 通称関東氷帝公演、8作目の全国大会準々決勝 通称全国氷帝公演で対戦)のテニス部員。謙也と侑士は従兄弟。

四天宝寺VS不動峰(全国大会準々決勝)

S3 遠山金太郎(とおやまきんたろう)VS伊武深司(いぶしんじ)

 伊武深司はシーズン1作目の地区予選決勝 通称不動峰公演にて主人公の越前リョーマと対戦、敗北する。

D2 石田銀(いしだぎん)・忍足謙也VS石田鉄(いしだてつ)・神尾アキラ(かみおあきら)

 パワープレイヤーの石田銀四天宝寺)と石田鉄(不動峰)、スピード自慢の忍足謙也四天宝寺)と神尾アキラ(不動峰)という互いのプレイスタイルが被っている者同士による試合。

 石田銀は石田鉄の兄である。

S2 千歳千里(ちとせせんり)VS橘桔平(たちばなきっぺい)

 2人はかつて獅子楽中のテニス部員で“九州二翼”と呼ばれていた。

 千歳千里は“無我の境地”の使い手である。

 無我の境地は関東立海公演S1越前リョーマVS真田弦一郎(さなだげんいちろう)で、越前リョーマと真田弦一郎の両者が出した技。真田によると無我の境地は「脳からの伝達ではなく、イメージとして焼きついたものを身体が直接反応して動いてしまう」状態である。それにより、今までに対決した相手の技を無尽蔵に放つ予想不可能なプレイスタイルになる。また、無我の境地を使いこなせるのは「我が立海大付属部長の幸村(ゆきむら)、九州の千歳、そして俺だ。」という。

青学VS四天宝寺

S3 不二周助(ふじしゅうすけ)VS白石蔵之介(しらいしくらのすけ)

 不二周助はその才能から「天才」と呼ばれ、トリプルカウンターと呼ばれる3つのカウンター技と、シーズン7作目・比嘉中学戦 通称比嘉公演D2不二周助河村隆(かわむらたかし)VS知念寛(ちねんひろし)・平子場凛(ひらこばりん)との対戦で初めて見せた4つ目のカウンター技・フォースカウンター・蜉蝣包み(かげろうづつみ)を操る。

 トリプルカウンター

  • つばめ返し

 跳ねないボールを繰り出す技。

  • 羆落とし(ひぐまおとし)

 スマッシュを打った直後で反応できない相手の後ろのベースライン際に球を落とす技。

  • 白鯨(はくげい)

 ボールがベースライン際にバウンドし、自陣コートまで戻ってくる技。

 

 フォースカウンター蜉蝣包み:どんな複雑な回転の打球も包み込むようにして無回転にして返してしまう。比嘉戦内では平子場凛の不規則にボールが曲がる技・大飯匙倩(おおはぶ)の回転を無回転にして返した。

D2 桃城武(ももしろたけし)・海堂薫(かいどうかおる)VS金色小春(こんじきこはる)・一氏ユウジ(ひとうじゆうじ)

 補足なし。

S2 河村隆(かわむらたかし)VS石田銀

 石田銀と同じく河村隆もまたパワー自慢のパワープレイヤー。普段は柔和な性格だがラケットを持つと性格が変わる。あだ名は“タカさん”。

 不動峰中学・石田鉄との試合で石田鉄の技を模倣した“波動球”が得意技。また、“ダッシュ波動球”という技もあるが腕に相当な負担がかかるため使用回数に制限がある。

D1 手塚国光(てづかくにみつ)・乾貞治VS忍足謙也・財前光(ざいぜんひかる)

 手塚国光は青学テニス部部長で全国区のテニスプレイヤー。関東大会初戦で怪我を負い、九州で治療を行っていたため長らく公式戦には不参加だった。比嘉公演からチームに復帰した。

 “手塚ゾーン”と呼ばれる相手が打ち返した球が自分のところへ戻ってくる技を持つ。

 また、比嘉中学S1木手永四郎(きてえいしろう)との試合で披露された“百錬自得の極み”という技も操り、木手によると百錬自得の極みを発動すると「全ての球種、全ての回転、全ての軌道、全ての破壊力、全てが倍返しになって俺のところへ」返ってくるという。

 乾貞治はデータテニスを得意とし、様々なデータをノートに書き記している。

S1 越前リョーマVS遠山金太郎

  補足なし。

おまけ ☆お楽しみ企画☆

 テニミュでは会場限定スペシャル企画として、開演前&終演後のキャストによる日替わりコメント(開演5分前と終演後にキャストが日替わりでコメントをアナウンスします)、座席番号による生写真抽選プレゼント、ランダムでキャストのコメントが見られるテニミュ・モバイル特製WEBコメントの企画があります。是非開演5分前に着席、幕間もしくは終演後には座席当選結果のチェック、そして会場のQRコードを忘れずに読み取って帰ってくださいね(会員制サイトテニモに登録すると更に楽しめますが、登録しなくても参加できます!)。奮ってご参加ください!

 また、今回はロビーに日替わりのテニミュウェルカムボードも設置してあります。

 

 わたしは四天宝寺のみんなのおかげでとっても楽しい冬休みを過ごしているので、皆さんにとってもそうであれば良いなあと思います。

 それでは、よいテニミュライフを!

2018年総決算 〜前編〜

 2018年の目標がすべての観劇記録をつけることだったのですが、どうやら難しいらしいということに気付き始めてきたので書きかけてる分以外の感想はこちらにまとめて所感を書こうと思います。

 舞台が少し合わなかったり、その時期にバタバタしてるとなかなか全部書くのは難しいですね。

 

MAPS

2018年6月22日観劇 @ABCホール

 「快楽至上主義者」のパーフェクトグラフィティケーション、「永遠なる怖れ」のインフィニティアフリード、「哀しみの奴隷」のザ・スレイブサッドネスという妖精のような化け物のような存在が3つの物語が交錯し合う中で闘いを繰り広げる話(ではないのだが、本質を探るとそうなる)。結局のところ、楽しいだけの人生は上手くいかないし、かといって怖がっているだけでは何も進まなく、哀しさも時に必要であるというような人生論の話だった。

 響く時は響くのかもしれないけれど、当時、かなり疲弊していて心理状況が舞台上の展開と酷似していたために、あまり楽しめなかった。物語の構成も少し煩雑になりすぎていたような気もする。

 多和田くんは骨格を殺す服を着てもスタイルが良くてすごい。

 

新・幕末純情伝 FAKE NEWS

2018年7月10日観劇 @紀伊国屋ホール

 紀伊国屋で観るつか作品はやはり良い。

 味方はやはりとんでもなく良く、小松田中増子あたりの所謂若手俳優勢もかなり頑張っていて大変良かった。北原さんは、ちょっと、舞台女優としてはどうかな…。今年の熱海が味方さん以外スロースターターだった印象なので、その点では幕末の方が安心して観られたかもしれない。

 これは無論、己の不勉強さが理由ですがオタクなのに幕末(新撰組)を履修していないのでストーリーそのものは観ていてストレスがあった。そろそろ履修したい。

 

半神

2018年7月21日観劇 @松下IMPホール

 乃木坂46桜井玲香さんと日本舞踏家の藤間爽子さんがW主演で、身体の一部を共有する双子の姉妹という役を演じていた。

 柿喰う客のメンバーが多く出演していて、舞台美術も中屋敷法仁お得意の八百屋舞台。これだけでも見応えがあったけれども、主演の2人がとても良かった。美人であるはずの桜井さんは醜い姉を演じ切っていたし、藤間さんの赤子のような妹の無垢さも良かった。きちんと演劇が出来る2人で良かったと思った。

 原作を読んでから観るか、もう一度観るかしたかった。

 

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学VS氷帝

2018年8月12日観劇 @メルパルク大阪

 楽曲が合わなかったのと、全体的に試合がアッサリ進んでいった気がして不完全燃焼で終わった印象だった。

 青学と比嘉試合シーンの回想が丹念に描かれていたのが嬉しかった。六角の時もあったのを思い出して、その時は気にも止めなかったけど青学キャストが卒業しても物語の連続性があることを示すために必要なシーンだと気付いた。

 リョーマが先輩に教わったことを思い返すシーンはどうしても9代目のみんなを思い出してしまったけれど、それは確かに否定的な感情ではなくて、良かったなあと思った。少しずつ受け入れられてたみたいだ。

 ヘビーレインの皆木一舞の風格が昭和歌謡を歌うアイドルスターでした。良かった。この公演1番のお気に入りポイント。

 

マリーゴールド

2018年9月8日観劇 @梅田芸術劇場シアタードラマシティ

 三津谷が優勝!!!!!!!!!!!!!!

 コメディもシリアスも演じられて身体性もある最高な役者。とんでもなく抜群に良かった。綺麗よ、ソフィ。

 

CURIOUS

2018年9月11日観劇 @中之島ビッグトップ

 サーカスを初めて観たけれども、とっても面白かった。上手い人間しかいないので。

 サーカスという演目の性質上構成が飽きさせないものになっている(大体披露する芸が段々とすごくなる)だけでなく、ストーリー仕立てなのと、舞台美術が凝っているため最初から最後までずっと楽しめました。

 ツイログ:身体性が高すぎると逆に身体はモノ化する

 

夏の夜の夢

2018年9月16日観劇 @三越劇場

 演出がなんのひねりもなくてつまらなかったけど、古典で三越劇場だからまぁいいか…。

 流石に日本語がおぼつかないキャストを日本語劇に起用するのはいかがなものか…というのが配役に対する素直な感想。ましてやシェイクスピアなのでなかなか…。

 加藤さんの演技が刀ステと比べて抜群に上手くなってて感動した。何があったのか。細やかな芝居は出来る人なのかもしれないと思った。

 

「DIVE!!」The STAGE

2018年10月6日 昼公演観劇 @森ノ宮ピロティホール

 この作品を舞台化する時、観客が一番楽しみにしていたのは「飛び込み」の描写だと思うのだけれど、前説で見せてしまっていたので残念に思った。フライングをアンサンブルにさせてしまうのも俳優の身体性を殺していたように思う。アイデアとしては良かったけれど、ベストではなかった。

 兎にも角にも、本当に小説が原作か?と思うほど(小説をアニメ化したものが原作ということは一応は理解しているが)日本語が変。脚本が変。飛び込みを始めたきっかけである先輩からかけられた言葉「きっと後悔するぞ」の先にあるのが「練習に熱中するあまり彼女を奪われる」だとか「普通でいられない苦しみ」でいいのか立ち止まって考えるべきだった。あの台詞はこの公演において一番大事にして欲しかった。

 良かったところもあっただけに残念だった。

 

 

 「貴方なら生き残れるわ」の感想は別で書こうと考えてますが、今年はテニミュを残して観劇は以上になります。後半にて総まとめを考えてます。

 おしまい。

コンテンツに幅を持たせるための“コンテンツの補強”という施策について

 紅白歌合戦の出場者が発表され、企画コーナーでミュージカル『刀剣乱舞』から“刀剣男士”が出演することも同時に発表されました。演劇の1ジャンルである“2.5次元舞台”が新たな広がりを見せたこと、どうやらミュージカル『刀剣乱舞』のプロジェクトが始動した頃からの悲願達成であることなどおめでたい側面もありながらも、一部のファンや他の2.5次元コンテンツに熱をあげるオタク(という表現しか見つからなかった)からは地上波の電波に乗って日本国民の多くが視聴する番組で紹介されることを「恥ずかしい」という声もいくつかあったように見受けられました(あくまでもわたしがそのように思っているのではなく、そのような声もあったという話です)。

 紅白歌合戦は近年企画枠としてアニメや所謂クールジャパンカルチャーの紹介にも力を入れているようにも感じますが、個人的には些か“刀剣男士”が“紅白歌合戦に出陣する”という事柄を唐突な出来事に感じるのは事実だと考えています。

 パフォーマンスのクオリティが2.5次元ジャンルではないミュージカルには劣るケースがあるだとか、オタクには“オタク”的なものをオタク以外に見せるべきではないという意識を持つ者も多いことや、よくわからないものを嘲笑する人が少なからず存在しているという事実など、要因は複合的であるように思われますが、わたしは「NHK紅白歌合戦」という番組が日本国民それぞれの文脈で確かな強度を保っていること、その強度がミュージカル『刀剣乱舞』が持つそれとは差が大きく開いており見合わないことが原因の一つではないかと仮定しました。

 その上で、ミュージカル『刀剣乱舞』を始めとする2.5次元コンテンツはジャニーズやその他アイドルと比べて、外野から見て「なんかかっこいい」と思えるような戦略を張っておらず、“文脈作り”が下手だ(“文脈作り”という表現は語りたかった内容を表現する上で妥当ではなかったように考えたので後述で訂正します)という意見をツイートしたところ、お題箱にて下記のお題が届きましたのでここで回答させていただきたいと思います。

>文脈作りの上手い例が知りたいです!(やはり歴史を重ねてきたテニミュがそうなんだと思うのですが、詳しくなくて…) https://odaibako.net/detail/request/996f54c90bb94c9081ee5b2ac7628175

 前提として明記しておきたいことは、この議論はオタクがどのような姿勢でコンテンツを楽しんでいるかというよりもコンテンツがどのような意思を持って広がりを見せるかという切り口でなされており、“オタクが内輪で盛り上がっている”コンテンツとそうでないコンテンツの間に優劣はないという考えがある上で、あくまでも「紅白歌合戦」に出場するというような“オタク”以外の人の目にも止まるように活動の幅を広げたい場合に“文脈作り”が必要なのではないかというのが論点であることです。また、一概に「広く知られていること」がコンテンツにとって必要だとは考えていません。

 前述で“文脈作り”と表現しましたがコンテンツそのものの文脈というよりも様々な人や別ジャンルコンテンツの文脈上でどれくらいの存在感を持たせられるか、転じて他のコンテンツの文脈からいかに語ることが可能であり、いかに他のコンテンツの文脈においてコンテンツの存在を保っているかが重要なのではと考えたため、以後“文脈作り”としていたものを「コンテンツの補強」と表現します。

 例として「木村達成」を挙げるとすると、その一要素からハイステ:中屋敷法仁(小劇場の文脈)が参加、和田俊輔(他ジャンルの舞台音楽の文脈)が参加、魔界転生堤幸彦が参加(映画やドラマの文脈)松平健(時代劇・高齢者の文脈)が参加というように、違和感のない連想ゲームがどれだけ展開出来るかがコンテンツが広く知れ渡るか、お茶の間に馴染むかの鍵になるかなと考えています。“日本人はドラマにお笑い芸人が出演することを面白いと思える”*1ような民族であるため、特にこの連想ゲームの広がりは大事なように思います。

 

 ミュージカル『テニスの王子様』(以下テニミュ)の語り口のひとつである歴史(2.5次元の元祖であるということ)は勿論テニミュというコンテンツそのものの文脈を強化する事柄の一つではあるとは考えられますが、テニミュコンテンツの補強はテニミュを卒業した役者たちが作り築き更新し続けているというようにわたしは考えています。「エリザベートで帝劇に立っていた城田優はかつてテニミュにも出ていた」「イケパラに出てた城田優はかつてテニミュにも出ていた」「CDを発売した城田優テニミュにかつて出ていた」というように他のコンテンツの文脈から語られることが結果的にテニミュという存在を補強しているわけです。キャスト卒業制度があることでこれは成り立っていますが、でもこれはキャスト卒業制度を作った当時としては意図しない副産物だったように思うので文脈「作り」の例とは言わないかもしれないですね。

 テニミュは「コンテンツの補強」においてはどちらかというと下手な方で、いつの間にか登場した“2.5次元作品”という文脈において元祖としてウッカリ大きく存在感を持ってしまったコンテンツなのではないかと考えています。やってることは今も昔も変わっていなく、新しいことを始めるにしても後手後手に回りがちで新しいことに対してあまり積極的ではないように見受けられます。個人的に(インターネットコンテンツに弱かった)ジャニーズを見ているのとかなり似たような感覚があります。しかし多くの人が“テニミュ”に求めているのは伝統・ある意味での古くささであり、大手コンテンツとしてどっしり構えていればファンの流出は少ないように考えられるし、それでも構わないように思えます。

 

 では「コンテンツの補強」が上手くいっている例として挙げられるのは何か。ネルケプランニングはそこを試行錯誤している最中であって、あまり“上手い例”というのはないのではないかなと考えています。以前のNHKで特集されていたミュージカル『刀剣乱舞』のドキュメンタリーがもう少し早い時間に放送されていたら良かったようには思います(実際、私の横でその番組の録画を観ていた母は、出演者一覧に目を通して刀剣男士の項目を見た後「あのドキュメンタリーでパリに行っていたやつね〜」と直ぐに飲み込んでいたので)。

 最近の2.5次元以外のコンテンツでいえば、「ヒプノシスマイク」は上手いと思っています。声優・キャラクターソングという強い結びつきのあるひとつの2次元コンテンツにこれまで相容れなかったラップ・ヒップホップ文化を持ち込んだのが「ヒプノシスマイク」です。これだけでは突飛に思えるかもしれないけれど、ヒプノシスマイク(ラップ)で闘う理由の設定をするという下地を作った上で、実在の有名ラッパーを楽曲に参加させる事でヒップホップ文化の文脈にひとつの要素として「ヒプノシスマイク」が存在出来るようにコンテンツ作りがされています。

 他にも「ヒプノシスマイク」の楽曲にはオリエンタルラジオ藤森慎吾が参加した楽曲もあり*2、それも一見すると唐突なように思えますが、“チャラ男キャラ”の藤森さんが“ホストのラッパー”の楽曲を制作したというところまであれば違和感はなくなる。これによってお笑いの文脈からも「ヒプノシスマイク」が語れるようになるわけです。

 「ヒプノシスマイク」は各ジャンルの境界線を曖昧にする仕掛けを作りながら他の文脈に「ヒプノシスマイク」の場所をこじ開けるのが上手い印象です。

 

 

 2.5次元領域の製作が2.5次元作品を制作し続けていても、ジャンルとして新しい風が吹かないのもまた事実であって、どこに/どのように風穴を開けるかがこれから先2.5次元作品が成長していくかの鍵であるように思います。そのひとつの施策として「コンテンツの強化」もされていくのだろうなと考えられますが、テニミュを起点に考えても15年の歴史しか無いわけですから、まだまだなんでもやれるしこれからどんどん上手く「世間」と交わることが出来るように思います。

 長々と書きましたが、「演劇」に新しい広がりを見せた「2.5次元作品」が次のステップとして「2.5次元作品」そのものとしてどのような広がりを見せるかはまだ過渡期であるし、“上手い例”は未だに無いと言えるのではないかというのがわたしの考えです。個人的には「2.5次元作品」の成熟を、過程を含め割と楽しみにしてます。

*1:中屋敷法仁ツイキャスより

*2:伊奘冉一二三「シャンパンゴールド」

原石はどんな夢を見るか

2018年9月17日 メタルマクベス disc2 @IHIステージアラウンド東京

 いかにIHIステージアラウンド東京の座席で回ることが楽しいかだとか、いかに「メタルマクベス」が面白いかだとかを書こうと2ヶ月ほど考えていたのだけれど、結局わたしは原嘉孝くんが素晴らしい芸人(ここでいう芸人とはお笑い芸人のことではない)であるかということしか語れないような気になったのでそれを記しておきます。あともう一度くらいは回りたいので、どうにかネルケプランニングはステアラ最後の年を抑えてくれ。

 

 原嘉孝くんについて私が持ちうる情報は多いようで少ない。彼のことを認識してから4〜5年は経っていると記憶しているが、彼が踊っている(あるいはドーベルマンの格好をしている)姿しか殆ど見たことがない。尾上松也のファンより、大原櫻子のファンより、少しだけ知っている。その程度だ。

 レスポールJr.というのが彼が演じた役だ。主役のランダムスターに父を殺され国を追われる王子の役。

 上手かった。当たり前のようにIHIステージアラウンド東京に立ち、自然の摂理のようにセンターで歌って踊っていた。この物言いは失礼かもしれないが、本当に驚いた。

 彼の本職は踊ることと歌うことだが、演技もそこらの若手俳優よりよっぽど上手いと感じたその理由を考えていた。観劇から2ヶ月ほど経って考えた結論としてはジャニーズJr.というのはこういう存在なのだなということ。原石は磨き上げれば宝石に成るかもしれないけれど、それだけでは多分遅い。原石を原石としても輝かせられるひとたちが残っている場所だった気がする。原石を宝石にする為の研磨と原石を原石のまま輝かせる研磨は恐らく努力のベクトルとギアが違う。彼は丹念にどちらの作業にも向き合って磨いて準備してきた人だったのだろう。ジャニーズJr.のある意味での器用貧乏さってこういうところなのかもなあ。むしろ何も持っていない人の方が「デビュー」してしまうのかも。この時代に「デビュー」が目指すべき唯一の正しい道だとは思わないことを前提として。

 レスポールJr.は宝石になる為に生きてきて、どうにかこうにか原石として輝いた人だったなあ。

 ユッケはもう食べない努力。そういう極端な努力だけじゃあ、たぶんダメなんだなとわたしは思うのですが、いかがでしょう。少なくともわたしはユッケを食べる方向で努力する人が好きです。

 

 

 おもしろい俳優になってねとわたしは思うのですが、すきなように、なるべくなるべくなるべく長くこの世界で活躍してください。